モチベーションアップは錯覚 仕事で感じる働きがいの実態写真はイメージです Photo:PIXTA

個々人の能力を最大化し
「楽しい仕事」ができる会社

 少し前の話だが、「今日の仕事は楽しみですか。」という広告コピーが炎上した。「仕事は楽しみか?」と問われると、楽しみなこともあるが、楽しみではないことの方が圧倒的に多い。特に、この広告が東京のJR品川駅の歩廊の両側に延々と続くデジタルサイネージで表示されたのが月曜日の朝だったということだから、通勤者はさぞや嫌な気持ちがしたことだろう。会社にもよるが、月曜の朝にはミーティングがあって、先週までの仕事の(進んでいない)進捗報告をして、上司や周囲からの冷たい視線に耐えなければならないのだ。

 仕事はそう簡単にうまくいくものではない。経験の浅いうちは失敗ばかりだ。特に難しいのは、仕事を進めていくうえでの人間関係の構築と運用(相手との適切なコミュニケーション)である。そもそものアイデアが良くても、人間関係がうまくいかないと実際の仕事は前に進まず、成果も得られず、他者からも受け入れられず、居場所がなくなってしまう。

 では、人間関係の構築と運用の難しさとはどこにあるだろうか。まず、なんといっても難しいのは、人間の行動特性を把握することだ。よって、その難しさを克服するための性格類型テストのようなものが多数ある。そして、これらは対人にも対チームにも役に立つ。実際に検査しなくても、これらのテストが表現している人の性格や行動思考特性を記述するもとになる概念を知っているだけで、人間をどのように把握するかについての知見が得られるのだ。

 企業によってはこれらの検査を賢く使う。人の行動や思考特性を測定し、人に合わせて、人を(その企業にとって)正しい行動に導くためのインセンティブを提示し、行動変容を促す。このような会社の社員は、「今日の仕事は楽しみです。」と言えるはずだ。このように組織運営の巧みな会社では、成果が出やすく、果実を皆で分かち合うこともできる。

 加えて、HR関係の行動データ解析が進んできた。これらをうまく使えば、個々の特性に合わせて、仕事を割り振ることができ、最適なチームメンバーを集めることもできる。そして、会社は「個々人のモチベーション(動機)に『フィット』する仕事を『デザイン(設計)』して『アウトプット』を最大化し、大きな成果を達成している」などと胸を張ることもできる。

 経済的な成果だけでなく、社会的な評判の獲得にもつながるから、いいことずくめのように見える。しかしながら、その実態はモチベーション(動機)を重視しているというよりは、“人をマニュピュレート(操作)している”という方が正確だろう。個人の立場から見れば、会社にいいように誘導され、その気になってやり続け、いつのまにか結構多額の金額を投じてしまう、オンラインゲームのようなものだ。