世界トップCMOSイメージセンサーや
電気自動車の「VISION-S」へ

 次にグループ全体での事業運営に目を向けると、ソニーは成長性、収益性、市場シェアなどの要素に基づいて、最も有効な資源配分を行おうとしている。

 その一つのケースが、代表的な画像処理センサーであるCMOSイメージセンサー事業だ。12年以降の経営再建でソニーは、CMOSイメージセンサー事業に経営資源を再配分して世界市場でトップのシェアを獲得した。現在、CMOSイメージセンサー市場でソニーは49%程度のシェアを持つ。近年のシェアは韓国のサムスン電子や米国のオムニビジョンの追い上げによって徐々に低下している。

 そうした状況下、ソニーは画像処理センサー事業の競争力を強化してさらなる成長を目指すために、台湾積体電路製造(TSMC)やデンソーとコンソーシアムを組み、熊本県に半導体工場を建設する予定だ。具体的には画像系のセンサーに加えて、車載、ロボット用のチップも生産される予定だ。

 その先にソニーが見据える事業展開を考えると、より鮮烈な映像などのコンテンツ没入体験を人々に与えることを目指しているだろう。例えば、ソニーは自動車分野での取り組みを進めている。同社が開発する電気自動車(EV)の「VISION-S」は、CASE時代の到来を念頭に置いた新しいモビリティー創出を目指した取り組みだ。その実現には、インターネットと接続し自律走行を行うための演算装置や画像処理技術、さらには車内エンターテインメントのためのコンテンツの開発や音響・映像技術などの革新が求められる。

 そのためにソニーは自社の持つモノづくり精神やコンテンツ創出力を、TSMCが持つ半導体製造の総合力の高さと、自動車関連分野でのデンソーの知見と結合して、新しい画像処理機能を持つセンサーや車載半導体などの創出を目指しているはずだ。より高性能、あるいは新しいチップの創出は、プレイステーションなどゲーム事業の強化にも欠かせない。