新・グリーンエネルギー戦争#2Photo:ugurhan/gettyimages

米アップルやアマゾンといったITジャイアントは、電力を大量に使う大口顧客である。そのITジャイアントが、発電事業にまで首を突っ込んでいる。電力を使うプレーヤーが、発電サイドに介入する動きが広がりつつあるのだ。特集『新・グリーンエネルギー戦争』(全7回)の#2では、電力業界のヒエラルキーを突き崩そうとする新たな動きをお届けする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

電力ビジネスの新ステージ幕開け
アマゾンと三菱商事の長期売電契約

 電力ビジネスが、新たなステージに突入したことを告げる“超ど級”の契約だった。

 三菱商事は9月、子会社を通じてITジャイアント「GAFA」の一角、米アマゾンと長期売電契約(コーポレートPPA)を結んだ。新たに太陽光発電所約450カ所を建設し、その発電所で生み出された電力は全てアマゾンが消費するという契約だ。

 太陽光発電所の合計設備容量は22MWで、一般的なメガソーラー22基分にも及ぶ。アマゾンが日本で初めて結んだこの売電契約は、日本最大のコーポレートPPAで、そのスケールは圧倒的だった。

 コーポレートPPAとは、需要家が自ら発電所を選んで受電契約を結ぶ方式。固定価格買取制度(FIT)のような政府の補助金に頼らず、ダイレクトに再生可能エネルギーの供給を「独り占め」できる手法として欧米で定着している。

 いよいよコーポレートPPAが、日本の電力ビジネスで主役を張る日が近づいているのだ。ある大手電力会社の幹部は「これからは大量の再エネを持っていないと、需要家から見向きもされない時代になる」と気が気でない様子だった。

 次ページからは、アップルやアマゾン、ソニーグループといったプレーヤーによって、どのようにして電力業界のヒエラルキーが崩れようとしているのかを詳らかにする。