食肉・木材、セメントまで…
世界中で値上げが起きる、もう一つの理由

 実は、「値上げの秋」は日本だけの現象ではありません。お隣の韓国や中国でも、同様の値上げが社会問題になっています。日本を含めて共通する値上げ品目として、これら農作物以外にミートショックと呼ばれる食肉の値上げが起きています。10月に牛丼の吉野家が突然牛丼を値上げしたのも、このミートショックの影響です。

 他にも中国では木材の価格も高騰していて、建材や家具の価格が上昇しています。セメントも不足しているといいます。実は食肉、家具、セメントの値上げには、もう一つの要素が関係してきます。

 それが、原油不足による原油価格高騰です。

 世界の工場である中国ではこの秋、政府による計画停電が大きな経済問題になっています。原油や石炭価格が高騰しただけでなく、量が絶対的に足りないことから電力不足が起きたのです。

 日本でも、大連の日本メーカーの工場が稼働停止を強いられているといったニュースが流れていましたが、この工場の断続的な稼働停止はかなり幅広い工業製品の生産能力に悪影響をおよぼしています。

 同時に原油高はミートショックにも関係します。養鶏場や養豚場など食材となる動物の飼育現場では、大量の石油を必要とします。さらにいえば、飼料となる大豆やトウモロコシの生産現場でも大規模農業を成立させるために石油が必要です。

 要するに、石油不足で工場が稼働できないから製品の生産が幅広い分野で停滞する、石油が高いから大豆、とうもろこしから食肉まで生産コストが上昇するといった現象が、コロナ禍の需給ギャップの拡大に輪をかけているのです。

 そしてここが重要な点ですが、もし世界経済をスタグフレーションが襲うとしたら、その引き金になるのは後者の要因である原油高、原油不足のはずです。

 コロナ禍から回復するプロセスで起きている需給ギャップがもたらす値上げなら、供給が回復する過程で半年後には価格は正常化されます。しかし原油価格が高騰し、しかも原油の量が不足して工場が稼働できなければ世界経済は混乱して、オイルショックが再来するかもしれません。