吉野家の牛丼が800円!?
もし、令和の日本でオイルショックが起きたら?

 1974年のオイルショックは、政治的混乱が引き金になりました。

 そもそもの原因は、石油輸出国機構(OPEC)がアメリカを中心とする西側諸国に対して経済制裁を発動したことです。当時、イスラエルと中東諸国は戦争を繰り返していて、イスラエルを支持するアメリカを政治的にけん制する必要があったのです。

 この制裁は原油生産の段階的削減を伴うもので、生産量が減ったうえで原油の公示価格は3カ月で約4倍に引き上げられました。オイルショックによる狂乱物価は原油価格の上昇が引き起こしたと報道されがちですが、当時を経験する私から見ると、とにかく石油が日本に入ってこなかったことの方が深刻でした。

 ガソリンスタンドに行ってもガソリンが手に入らないなどというのは、今の世代は経験したことがないでしょう。工場も稼働が止まり、政府は総需要抑制政策を決定し、「物がなくなる」とデマが広がってトイレットペーパーが店頭から消えてしまう。1974年の消費者物価指数の上昇は統計では23%上昇となっていますが、消費者感覚では町中の生活用品の値上げ幅は、ほぼほぼ2倍だったというのが実感です。

 令和の日本で同じことが起きれば、ガソリンの小売価格がリッター250円を超え、吉野家の牛丼並盛が800円、マクドナルドのバリューセットが1500円、特売のマヨネーズが1本498円になるような世界のイメージになります。缶ビールは350ml缶が350円、鳥貴族は一皿600円。でも、給料の手取りは今と変わらない。1974年の日本で起きたことは、そのような経済ショックだったのです。

 もしコロナ禍からの回復をめざす世界経済の中で、原油が不足したらそれと同じことが起きるかもしれません。ではそれは起きうることなのでしょうか? ここが最大の論点です。