「素封家」とは、大金持ち、金満家のこと
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素封家(そほうか)
〔意味・由来〕 大金持ち、金満家。「素封」+「家」の三字熟語。「素封家」の「素」は「空しい」の意味があり、「封」は、「君主から与えられる領地」の意味がある。「素封家」は、位や領地がなくても、大名と同じくらいの莫大な富や資産を持っていることをいう。
芥川龍之介は、短編小説『黒衣聖母』で新潟県の素封家に起こった奇怪な現象を書いている。聖母マリア像には、傷ついたイエス・キリストを抱く「ピエタ」のような慈愛を表すものが多いが、芥川の描く物語は、いわくつきの黒衣の麻利耶観音像の世界である。悪意を帯びた嘲笑を漲らせて、にやりと微笑むその像は、「禍を転じて福となる」のではなく、「福を転じて禍とする」のだ。それには、願いを最も醜悪な形で実現させる力があるのか、祈願者を闇に突き落とし、黒い現実を引き寄せる心願成就の世界が広がる。「素封家」の老婆が孫の回復を一心に願う気持ちが痛ましい。
〔引用〕 ―――この麻利耶観音は、私の手にはいる以前、新潟県のある町の稲見と云う素封家にあったのです。勿論骨董としてあったのではなく、一家の繁栄を祈るべき宗門神としてあったのですが。その稲見の当主と云うのは、ちょうど私と同期の法学士で、これが会社にも関係すれば、銀行にも手を出していると云う、まあ仲々の事業家なのです。(芥川龍之介『黒衣聖母』)
西角けい子(にしかど・けいこ)
ステージメソッド塾代表/学習コンサルタント/三字熟語研究家
オムロンを退職後、日本有数の大手塾の激戦区である兵庫県西宮北口にステージメソッド塾を開業。
国語力を急伸させる独自の「ニシカド式勉強法」により、わずか6ヵ月でごく普通の成績だった7名の塾生を日本一(全国版学力テスト)に育て、多くのマスコミから取材される。「お母さんの言葉がけ」と、「暗記力」「ノート力」「作文力」アップを重視した「ニシカド式勉強法」は定評があり、倍率10倍以上の超難関公立中高一貫校に、14年連続地域No.1の合格者を出している。片道3時間以上かけて通う小学生や新幹線や飛行機で通塾する中学生もおり、塾周辺に転居してくる家庭も多い。
ひょんなことから、国語の世界で影が薄い「三字熟語」のおもしろさに気づき、軽やかで、庶民的で、思わずクスッと笑ってしまう三字熟語にハマる。三字熟語ラブな思いが高じて、三字熟語クイズを作り始めた。夏目漱石や太宰治などの文豪が使う「三字熟語」の巧みな表現にしびれ、文豪の人間味や生き方に興味を抱き、文豪の出生地巡りや墓参りをしながら、「三字熟語」の探究を続けている。