(1)年齢序列システム
もっとも伝統的なものは、実は年功序列ではなく、“年齢”序列システムである。年功というのは、本来は勤続年数×功績なので、功績も本来重視されるはずなのだが、昇進・昇格において、基本的には年のウェートが非常に大きく、功の割合が極めて少ないシステムを採用する組織である。とはいえ、年がかさんだ全員を役員にするわけにもいかないので、実際には、年齢が上がれば全員部長くらいには昇進でき、それより上は選ばれたものだけが役員になるなどの方法をとった。報酬においても基本的に年齢(勤続年数)の要素が高く、役員と部長でさほどの差はない。
このようなシステムは、平成中期くらいにはほとんど消え去ったが、いまだに変化がそれほど激しくない伝統的な業界の企業などでは、この方式だったりする。組織は極めて安定しており、社内的な紛争は起きないが、優秀でやる気のある人でも、成果を出したからといって個人に対する見返りはない(だからといって新しい挑戦が起きないというわけでもないが)。
(2)年功序列システム
本来のあるべき年功序列である。基本的には年齢(勤続年数)をベースにした入社年次管理をしており、中途採用者も学校の卒業年度をもとに年次管理に組み込まれる。昇進昇格においては、功績に応じて早く上がれる場合もあるが、各階層で最低滞在年数が決められ、飛び級もないので、30代で役員になることは制度上できない。年次管理なので、実は昇進昇格における競合は同年次の社員だけである。
たとえば、10年目には同期の中で5%だけが上の階層に上がる、などの決まりがある。あくまで競争相手は同期であり、他の年次とは競争はしないのである(結果的に、年上を部下に持つことはあるが)。この競争システムは、長期にわたり複数の上司から観察された上で登用されるため、人間性を含めて、多面的に評価される。よって、適切に運用されれば、納得性はかなり高いものとなる。
(3)早い年功序列システム
(2)をさらに早めた早期選抜を行う年功序列である。(2)は、組織としての安定性があり、かつ間違った人材の登用をする可能性が少ないために、日本企業においては伝統的に多用されてきた。しかしながら、困ったことに、新しい技術への対応、新分野への進出などにあたり、年功序列でやっていると間に合わない状況が生まれてきた。また、外国企業などは若くても優秀であればどんどん登用し、報酬もたくさん出すので、優秀な人材が引き抜かれるようになってきた。そこで、功績がそれなりにあり、将来の期待値が高い場合は、早く出世させて権限も与えるように変えようとしてきている。これが早い年功序列システムである。
このシステムでは、年次管理が捨て去られたわけではない。年次管理を維持したまま、功績と期待値に応じて、早い昇進昇格が可能になったというものである。これは、変化に対応しやすくなったことが良い点として挙げられるが、悪い面としては、功績があって昇格したというよりも、期待値をもとに昇格させることが多くなるため、期待外れや明らかな失敗も多い。そして当人は、周りからのいらぬ怨嗟を買って仕事がやりにくい。
(4)職務ベース管理システム
いわゆるジョブ型管理であり、職務があって、遂行するための能力要件が明確化されていて、そこに合致する人がその職務に就くという管理の方法である。それなりの職務にはそれなりの経験と実績が必要となることから、結果的にそれなりに年齢の高い人が就くことになりがちだが、それは結果論であり、職務の要求するスキルや能力と、当人の保有スキルと期待値によってマッチングがなされる。
入社年次管理は基本的にはなく、同時に入社した大卒社員であっても入社時に付く職務のグレードが違えば、最初から報酬額は異なる。したがって、入社年次や同期という概念が会社には希薄で、上司が年下であろうと年上であろうと、それが話題になることはない。年下上司はごく普通にある。
さて、読者の働いている企業は、(2)か(3)、または(2)から(3)に移行中というところが多いのではないだろうか。表向きは(4)のジョブ型と言いつつ、実際にはまだ内定式とかをやったりしているから、裏では年次管理を捨てていない企業がほとんどだと思う。長年、企業を見ていて、(2)は安定している。社内の納得性も高い。ただ変化対応には弱い。デジタルネイティブでないとわからないことを50代が意思決定するようなことが実際に起こっている。