抜擢人事の「年下上司」がつらくなる理由写真はイメージです Photo:PIXTA

 年次逆転の部署がすでに普通になってきている。公然と年下上司に反旗を翻す職場もある。やりにくそうにしながらも気を使い合っている職場もある。あまり気にせず普通にやれている職場もある。

気まずいわけは
動物行動学で説明可能

 なぜ、気まずくなるのだろうか。ついばみ序列(pecking order)というのがある。ニワトリの集団を作ると、まずあちこちでけんか(ついばみ合い)が始まり、この中で序列が形成される。一度、これが形成されると、いろいろな場面(典型的には食事)で、下位のものは上位のものに順番を譲るため、集団内のけんかは減少する。これがついばみ序列といわれるものである。

 餌を求めるたびに闘争を繰り返せば、集団は疲弊し敵に襲われたらひとたまりもない。このように闘争を避ける仕組みがあれば、衝突は少なくなり、外敵への戦闘力も維持される。

 つまりは集団の戦闘力を維持するための内ゲバ防止のシステムである。したがって、このシステムを無効にする何事かが起こると、その当事者だけでなく、参加者全体が問題視するのである。

 伝統的な日本企業では、ついばみ序列の代わりに、入社年次という序列が使われており、先輩は後輩よりも基本的には上位に立っている。実権は下のものに渡したとしても、少なくとも形式的にはいつも年上の者が上司になっていた。

 このおかげで、日本企業の組織は安定性が高く、協力関係も作りやすく、内部の戦いにエネルギーを消費することが極めて少なかった。社内でのポジション争い(足の引っ張り合い)が激しく、人が出ていく外国企業よりも大きな利点があったのである。この際、運用されていたのが、年功序列という名前の人材登用システムなのだが、実際には、これにも、いくつかのバリエーションがある。