自分から「弱み」を宣言してしまうほうが
気持ちが落ち着いてやりやすくなるケースも

4.英語が苦手であることを宣言してもOK!

「どうしても英語が苦手!」というかたは、あらかじめ「私は英語が得意ではない」と宣言してしまうのも一手です。

English is not my first language. Please let me know if you do not understand me.」(英語ネイティブではないので、私の言うことがわからなかったらおっしゃってください)と最初に言ってしまえば、「英語は苦手ですが、一生懸命お話しします」という姿勢が伝わり、相手も「英語にハンデがある上でコミュニケーションをする」という前提で聞いてくれる可能性が高くなります。

「え!そのようなこと言っていいのですか?」と聞かれることがあります。「いいか悪いか」はケースバイケースです。「英語が得意でない」と最初に伝えることで、自分の気持ちが落ち着いて(開き直って?)やりやすくなるというのであれば、言うことをお勧めします。逆に、これを言うことで心理的負担が大きくなるというかたは言わないほうがいいでしょう。

「そのようなこと言っていいのですか?」という質問の中には、「自分の弱みを見せてしまっていいのですか?」という不安が含まれていることもあるように思います。それもよくわかります。ただ、10分も話せば、その人の英語レベルというのは相手にはわかってしまうものです。それならむしろ、自分から「弱み」を宣言してしまうほうが好感度が上がるように思います。

真のグローバルなコミュニケーションというのは
英語力ではなく「自分らしさ」を発揮できること

 今、世の中は、ダイバーシティ&インクルージョンなど、多様性を重視することの大切さがさまざまな場面で強調されています。

「グローバル」というときの共通語はほとんどの場合が英語ですが、だからといって、英語ができないということに対して理解を示さなかったり、あからさまにバカにしたりするのは、「教養がない」あるいは「多様性を理解していない」という評価を受ける風潮へと変わりつつあります。これは、10〜15年前にはなかった風潮です。

 中国やアジア諸国などの非英語圏の国が、経済力で台頭していることなども影響しているかと思いますが、多様性を重んじる傾向が世界で広がりつつあるなと、通訳の現場でも感じます。英語ネイティブであっても、今や「グローバル」=「英語」ではない、という意識を持ち始めているのです。

 そのような中、「私の言うことがわからなかったらおっしゃってください」と真摯(しんし)に伝えてくる相手に対して、あからさまに上から目線でバカにするような人は、古い観念に縛られている人なのです。

 本当の意味で「グローバル」であることは、英語が流ちょうであるということではなく、多様性を尊重しながら、(英語が完璧ではないことも含め)「自分らしさ」を存分に発揮できる世界であるということに、皆が気づき始めているのかもしれません。