グーグル、マイクロソフトでも独自チップ採用の動き

 このような状況の中、サービス(に基づく広告業)をビジネスの主軸に置くグーグルや、OSとオフィススイートの販売・ライセンスからデータベースやクラウドサービスへと守備範囲を広げるマイクロソフトも、コンシューマー市場や新規市場向けのハードウエアとそこに含まれる半導体を自製する戦略を無視できなくなってきている。

 確かに、汎用ハードウエア向けにOSやサービスを提供することは、市場シェアを取る上で有利かもしれない。ただし、そうした戦略はコモディティー化した製品分野に対して有効であっても、先端機能が求められる新規分野の製品には通用せず、少なくとも初期段階では汎用ハードウエア自体が存在しない。そうなると、自らそのような製品を作って市場を切り開く必要が出てくる。

 現在のスマートフォンのようなコモディティー化した製品分野でも、AIを駆使したコンピューテーショナル・フォトグラフィーのような機能性が差別化につながるとなれば、半導体レベルでそれを支える仕組みが重要となる。グーグルやマイクロソフトが自社開発の半導体に力を入れてきているのも、そこを押さえておかなければ、将来的な新規ビジネスの道を自ら閉ざすことになりかねないためだ。

 ちなみに、同じAI活用のコンピューテーショナル・フォトグラフィーでも、アップルは写真や動画の質やアート性を高めるために利用する傾向があるのに対し、グーグルはエンターテインメント性を重視しているように見受けられる。この差は、iPhoneとPixelの製品作りの方向性やマーケティング戦略の違いから来ていると考えられるが、なかなか興味深い展開といえる。現時点では、グーグルのTensorはサムスンのExynos SoCをベースとしているようだが、今後はより独自色を強めてくるだろう。