「抜擢」するから若手が育つ
「抜擢」こそが、若手が急成長する理由とお伝えしましたが、「抜擢」するから若手が育つと言い換えてもいいでしょう。実際、「サイバーエージェントは、若手の抜擢人事を積極的におこなっている」といった形で、メディアで取り上げていただくこともあります。
しかし、「抜擢人事」という言葉だけ聞いてしまうと、次のような懸念を覚える方もいるのではないでしょうか。
「そもそも優秀な若手がたくさん入社するから、若手の登用が可能なのだろう」
「サイバーエージェントだから、抜擢人事ができるのだろう」
この言葉の裏には「自社では無理」というニュアンスが隠されています。
たしかに、サイバーエージェントでは抜擢人事をおこなっていますが、それは能力が高くてリーダーシップのある若手人材が豊富だからできるのではありません。
ほとんどの企業は教育が先だと考え、教育という名のもとに研修をしますが、その後に抜擢をおこなうことは、ほとんどないでしょう。これは企業が「育てる」スタンスです。
サイバーエージェントの場合は、育てるのではなく、それよりもまず抜擢する。
つまり、先に「抜擢」があるのです。いわば若手が自力で「育つ」スタンスです。
もちろん「育てる」スタンスでも人は育つと思いますが、教育が先だと時間がかかりますし、どうしても本人たちは受け身になりがちです。
一方の「育つ」スタンスの場合、抜擢→自走の順番で「人が育つ」という考えなので、より速いスピードでより多くの人材育成が実現します。
ここが大きな違いです。
この連載でお伝えする「若手が勝手に育つしくみ」は、
・普通の若手が優秀なリーダーに成長するためのしくみ(フレーム)
です。それゆえ、はじめから優秀である必要はないのです。しかも、
・誰もが成長するしくみ
です。そこには年齢も経験も能力も関係ありません。
「若手が勝手に育つしくみ」があるから、サイバーエージェントでは未経験の学生でも、マネジャー登用ができるというわけです。
このフレームは驚くほどシンプルなものですので、皆さんの会社やチームでも、再現性があります。昇進や異動なども不要、日常業務の中でも「若手が勝手に育つしくみ」は活用できるからです。
※本連載では、これまであまり語ることのなかった、サイバーエージェントで実践している、「若手が勝手に育つしくみ」の全体像について説明します。(次回は11月27日公開予定)
1974年神奈川県横浜市生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。1998年伊勢丹に入社、紳士服部門配属とともに通販サイト立ち上げに参加。1999年、社員数が20人程度だったサイバーエージェントにインターネット広告の営業担当として入社し、後に営業部門統括に就任。2005年に人事本部設立とともに人事本部長に就任。2008年から取締役を6年務め、2014年より執行役員、2016年から取締役に再任。2020年より現職。著書は『強みを活かす』(PHPビジネス新書)、『サイバーエージェント流 成長するしかけ』(日本実業出版社)、『クリエイティブ人事』(光文社新書、共著)等。ビジネス系ユーチューバー「ソヤマン」として情報発信もしている。
2005年の人事本部長就任より10年で20以上の新しい人事制度や仕組みを導入、のべ3000人以上の採用に関わり、300人以上の管理職育成に携わる。毎年1000人の社員とリアルおよびリモートでの交流をおこない、10年で3500人以上の学生とマンツーマンで対話するなど、若手との接点も多い。