エリートビジネスパーソンに求められていた理想像

 圧迫面接とは、90年頃にアメリカで発明された面接手法と言われており、私が知る限り、20年前ぐらいが使われるブームとしてはピークだったと思います。主に大企業の幹部面接のプロセスの途中で、高圧的でとても理不尽な態度を取る幹部が面接官として登場するというものです。

 面接官は役割として、不機嫌で否定的な面接官を演じます。候補者にわざと意地悪な質問をしたり、威圧的に反論をしたりとマウンティングを繰り返します。実は面接官としての彼が見ているポイントは、そのような場面に直面した際に、感情的にならずに冷静に対応する態度が取れるかどうかです。ここでマイナスに評価されるのは感情的に反論する場合や、面接官に対して不快感を表す場合、ないしは逆に萎縮して黙り込んでしまう場合です。

 大前提として、アメリカでは典型的なエリートビジネスパーソン像というものがあります。例えば、手ごわい取引先に対してタフネゴシエーターとして粘り強く交渉ができたり、如才なく立ち回り、あざやかに場の空気を変えてみせたりといったスーパーマンのような活躍を見せる人材が経営幹部層に登用されます。そういった人材なら、まず間違いなく圧迫面接を満点でクリアできる……。

 私に秘密を話してくれたIT企業のオーナー社長も、以上のような情報から自社でも圧迫面接を取り入れたのだと思います。

 なお、このIT企業の場合、圧迫面接の面接官に頻繁に起用される幹部がいらっしゃいました。その方は、本当はおちゃめでユーモアの利いた方なのですが、一見強面に見える外見を活用して嫌なタイプの面接官を演じるのがとても上手でした。ちなみに採用決定後は、圧迫面接をした相手と一席設け、ネタばらしをしたうえで仲直りをするのが彼のルーティーンでした。