自分の中にある「三毒」と物差し
文化時報社による「文化時報賞」は、福岡市早良区にある浄土真宗本願寺派の淨覚寺の作品「菌を振りまかないはずのマスク越しに余計なことを言い 消毒したはずの手がいらんことをする」となりました。「今年の年賀状より」と添え書きがあります。
この1年半の間、「マスクの着用」と「手の消毒」が完全に習慣化されました。それらによって、外に存在する新型コロナウイルスからある程度身を守ることができたことは事実ですが、そもそも私たちの体内には「三毒」が存在しています。
「三毒」とは、「貪欲(むさぼり)」と「瞋恚(いかり)」と「愚痴(真理を判断できないこと)」を指します。これらは口をマスクで固めて、手を消毒したところでどうなるものではありません。以下が文化時報社による講評です。
どんな「余計なこと」を言い、何の「いらんこと」をしてしまったんでしょうか……。人間の業はコロナ禍でも変わりませんね。来年の年賀状に使わせていただきます。
外に存在するウイルスばかりに気をかけるのではなく、内にある三毒(煩悩)にも目を向けましょう。
もう一つ、お笑い芸人の笑い飯哲夫さんによる「笑い飯哲夫賞」をご紹介します。仏教にも造詣の深い哲夫さんが選んだ作品は、東京都葛飾区にある真宗大谷派の蓮光寺の作品「私の物差しで問うのではなく 私の物差しが問われる」です。
哲夫さんは審査員を最近務めることが多いため、この言葉が非常に心に刺さったそうです。自分の物差しで周囲のものに対して価値判断をすることは非常に容易ですが、自分の物差しに疑問を持つことは非常に困難です。
仏教の教えは、他者の行動やあり方を問うためではなく、自分の物差しを問うために存在しています。自分の物差し(価値観)が果たして適切なのか、仏教を通して常に問い続けていきましょう。