エクセルマクロの挫折しない勉強法や仕事で使いこなすコツを徹底解説!
講師の寺澤さんはこれまでの20年間マクロを使って様々な業務を効率化させるなど、数多くの社内表彰を受けてきました。例えば、数十万行の元データから分析用データを毎週作成する作業。人の手だと1週間かけても終わらない作業ですが、マクロを使うと30分程で完成してしまいます。さらに自ら社内講座も主催、全くマクロを触ったことがない数百人を指導し、満足度98%と人気を博しています。近著『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』では、そのエッセンスを余すところなく紹介しています。本連載では、エクセルマクロを仕事で使うための本当に必要な知識だけを、できるだけわかりやすく説明していきます。好評連載のバックナンバーはこちらから。

「仕事ができる人・すぐに終わる人」がやっているエクセル仕事の秘訣Photo: Adobe Stock

 仕事においての「優秀さ」の基準は多々あります。その中で私が重要視しているのが「しくみを作れるかどうか」です。しくみ作りというと「会社の中枢にいる人やリーダーのやることではないか」と思われるかもしれません。しかし、実際の業務現場であっても、自分しかやらない仕事でも、これはとても大切です。仕事を終わらせる早さ、そのクオリティに直結するからです。

できる人には仕事の全体像が見えている

 しくみを作れない人は、仕事を頼まれたらいきなり手を動かしだします。確かにそれで何時間か作業をすれば、とりあえず終わらせられるでしょう。しかし、このやり方では次回同じことを頼まれても、また同じ作業をくりかえすだけ。改善がありません。

 一方、しくみ作りができる人は、いきなり仕事にとりかかりません。まず、全体像を把握します。どのようにすれば良いか「データを収集してエクセルにまとめる」仕事で考えてみましょう。

「データを収集してエクセルにまとめる」仕事の場合
・この仕事は1回限りなのか。今後もくりかえされる(毎日・毎週・毎月・毎年)のか
・載せる元データはどこから取ってくるのか
・その元データにどのような加工を行うのか
・作業後のデータはどの部門にどのように渡すのがベストなのか
・この一連の作業は自動化できないか

 これらを考えれば、やるべきことの全体像が見えてきます。同時に工程や、おおよその所要時間もわかるのではないでしょうか。その結果、1度きりの仕事でそんなに時間がかからないとわかれば、即座に手を動かしたとしても大きな問題はありません。ただ、もし今後もくりかえされるなら、エクセルマクロを使って仕組化できないかなどと考えるのです。

 優秀な人はそれぞれの仕事を1つずつ別物とみなしません。共通する作業や、仕事全体をくりかえし行うとわかったら「次やるときは効率化できないか?」と考えるのです。

スキルの身につけ方でも差がつく

 全体像をとらえる以外で、しくみ作りに必要なことがあります。それは、どんなツールが役立つのか情報収集しておくことです。今回のエクセルの例であれば、エクセルマクロがそれにあたります。これは、エクセルで行う作業を自動化するものです。事前にプログラミングしておき、それを実行させればその作業はボタン1つで終わります。

 大切なのは、やみくもにツールの使い方を勉強しないことです。エクセルマクロであれば、まず知っておくべきはその「組み立て方」ではなく「何ができるのか」です。

 実現したいことがあいまいなまま勉強をはじめると、目的がはっきりせず苦労します。しかし「この作業が効率化できる」と知っていれば、必要なものだけピンポイントで習得できます。ネットで調べたり、できる人に聞いたりするときに効率的です。

 ツールを知らない人、やみくもに勉強する人は毎回時間をかけて遠回りすることになります。手を動かして目の前の問題を解決する以外に手段がないからです。

しくみ作りの時間を確保しよう

 今は、個人がどんどんスキルアップして、しくみを作っていけます。業務を工夫し、改善するための一環として、しくみ化に取り組んでみてください。

 今回例として挙げたエクセルマクロは、エクセルを使っている人には特に有効です。エクセルに元々ついている機能なので、追加で何か用意する必要もありません。うまく使いこなせば、手作業でしている仕事のほとんどが自動化できるようになります。これまで数時間かかっていた仕事をボタン1つ押すだけで完了させることも可能です。

 ぜひ、この1年してきた仕事を見直し、しくみ作りと効率化や自動化を考える時間をとってみてください。

寺澤伸洋(てらさわ・のぶひろ)

「仕事ができる人・すぐに終わる人」がやっているエクセル仕事の秘訣

1976年、大阪府生まれ。灘高校、東京大学経済学部卒業後、日系メーカーで17年間勤務。経理や営業、マーケティング、経営企画などに携わり、独学で覚えたエクセルマクロを用いて様々な分析や業務改革を行う。2017年、GAFAの日本法人のうちの1社へシニアマネージャー(部長)として転職。これまでエクセルマクロを用いた業務改善などで数多くの社内表彰を受けている。手作業では不可能なほど大量のデータを、短時間で分析しやすく加工したことが評価され、社内エクセルマクロ講習会の講師として延べ200人以上に講座を実施。エクセルマクロについて1から10まで教える詰め込み型の学習ではなく、仕事に必要な部分だけを効率的に学べる講座として満足度98%の高い評価を受けている。