「相続争いは、金持ちだけの話ではありません。『普通の家庭』が一番危険です」。知られざる相続のリアルに踏み込み、相続本としては異例のヒット作となった『ぶっちゃけ相続』。著者は、相談実績5000人超を誇る相続専門税理士の橘慶太氏。「タンス預金は税務署にバレる!」「贈与税がかからない4つの特例」「専業主婦のヘソクリは税務調査で大問題!?」「1億6000万円の節税ノウハウ」など、相続にまつわる法律や税金の基礎知識から、相続争いの裁判例や税務調査の勘所まで学ぶことができる。(相続手続に特化した新刊『ぶっちゃけ相続「手続大全」』は12月8日発売)。
今、「相続の最前線」で何が起きているのか。「相続専門YouTuber税理士」という生存戦略に焦点を当てる。(取材・構成/前田浩弥、撮影/疋田千里)
「挫折」をきっかけに税理士を目指す
――『ぶっちゃけ相続』の著者プロフィールには、「中学・高校とバンド活動に明け暮れ、大学入試の失敗から一念発起し税理士を志す」とあります。この一文に、橘先生の人生の物語がぎゅっと詰まっていますね。詳しく教えてください。
橘慶太(以下、橘):大きな転機が、大学受験で第1志望に落ちたことなんです。そもそも受験勉強を始めたのが高校3年生の夏ごろと遅かったので、当然といえば当然なのですが……。高校3年生の夏まではまさに「バンド活動に明け暮れ」ていて、ギターの専門学校にいくことも考えていたくらいです。
――プロになることも視野に入れていらっしゃった。
橘:はい。でも専門学校の説明会にいったら、私なんかよりめちゃくちゃうまい人がゴロゴロいまして……(苦笑)。これはダメだとあきらめて、遅まきながら大学受験を目指すことにしました。そこからは自分なりに一生懸命勉強したのですが、残念ながら第一志望に落ちまして、滑り止めで受けた大学にいくことになったんですね。
――そうだったんですね。
橘:行きたかった大学の赤本の合格体験記のページを読んでみたら、どの人も「私は高校1年生のときには英単語を勉強して、高校2年生のときは……」みたいなことが書いてあるんですよ。「やっぱりみんな、1年生のときから勉強していたんだなー」と、素朴にそんなことを思いまして。そこで気づいたんですね、「コツコツやっている人には勝てないんだな」と。
――なるほど。
橘:ということはですよ。「大学1年のときからコツコツ何かに取り組んだら、自分は何者にでもなれるんじゃないか」とひらめいたんですね。
――おお!
橘:そこで「大学に入ったら4年間、何かにコツコツ取り組む」ことが決まりました。
――とても大きな転機でしたね。挫折がかえって、長い人生を歩むにはいい方向に転がりましたね。
橘:自分でもそう思います。
――ところで、なぜ「コツコツ取り組む」対象を「税理士」に定めたのでしょうか。
橘:「国家資格」をとろうと思ったんですね。たまたま大学1年の前期に会計学の授業があり、簿記に出合ったんです。授業で教授が「この問題を解けた人から帰っていいよ」と難題を出題したのですが、そこで私は、圧倒的なスピードで解けてしまい、一番に帰ることができたんですよ。「これはおれ、簿記の才能あるわ」と思ってしまって(笑)
――橘先生はとことん素直ですね。
橘:あはは(笑)。そうかもしれません。