税務調査は「白旗」を揚げたほうがトク!? タイミングと伝え方を徹底解説!

「相続争いは、金持ちだけの話ではありません。『普通の家庭』が一番危険です」。
知られざる相続のリアルに踏み込み、異例のヒット作となった『ぶっちゃけ相続』。著者は、相談実績5000人超を誇る相続専門税理士の橘慶太氏。「タンス預金は税務署にバレる!」「贈与税がかからない4つの特例」「専業主婦のヘソクリは税務調査で大問題!?」「1億6000万円の節税ノウハウ」など、相続にまつわる法律や税金の基礎知識から、相続争いの裁判例や税務調査の勘所まで学ぶことができる。(相続手続に特化した新刊『ぶっちゃけ相続「手続大全」』は12月8日発売)。
今、「相続の最前線」で何が起きているのか。本日のテーマは税務調査。「税務署に目をつけられてしまう行動」「税務調査時の心がまえ」などなど、当事者しか知りえない相続のリアルをぶっちゃける。(取材・構成/前田浩弥、撮影/疋田千里)

税務署との攻防戦! 「300万円の絵画」をめぐる駆け引き

――『ぶっちゃけ相続』の中には、税務調査を避けるためにやっていることが裏目に出る例として、「111万円の生前贈与をして、贈与税を少しだけ納税する」という話がありました。納税者が少しでも税金を安くしようとする話はたくさんありそうです。
※詳細はこちら→「111万円の生前贈与」をすると税務署にマークされる!? 理由を徹底解説!

橘慶太(以下、橘):そうですね。一度、ヒヤッとした経験があります。ある富裕層のご家庭の相続です。家には高そうな絵画が何点も飾ってありました。申告ではそれらの絵画の鑑定額も記さないといけないのですが、私には絵の価値はわかりませんから、クライアントに調べていただくんですね。

――そこは自己申告なんですね。

橘:その中で、あるひとつの絵画の鑑定額が「300万円」とおっしゃったんです。私はもちろんそれを信じ、「300万円」と申告しました。そして数ヵ月後、その方は税務調査に選ばれることになります。私は確認のため、「この絵、300万円で大丈夫ですよね?」と聞いたら、「いやー、ちょっと……」と顔が曇り、言葉も濁りはじめまして……(苦笑)

――本当はもっと高い価値があると知っているのに、橘先生には「300万円」と言っていたわけですね。

橘:そうらしいんですよ。その方も「この絵は蔵に隠したほうがいいでしょうか?」と慌ててしまったので、「いやいや、そんなことをしたらとてもまずいことになりますから、そのままにしておいてください」と必死に止めました。

――それは焦りますね。

橘:そしていざ、調査が始まったら、調査官は案の定、「どれが300万円の絵画ですか?」と聞いてきます。こちらは「家にたくさん絵がありまして、トータルでそのくらいですかねー」とふんわり伝えたら、調査官は「じゃあすべての絵を写真に撮って帰りますね」と。私が「税務署の人たちは写真を見て、絵の価値がわかるんですか?」と聞くと、調査官は「いや、私たちもわからないので、外部の鑑定士に出します」と言うんですね。

――甘くないですね。

橘:そうですね。「ならば仕方ない」と、ハラハラしながら鑑定を待っていたのですが……。結果は、「絵画はまるっと300万円でOKです」となりまして。私はホッとしたのですが、クライアントのほうは複雑な顔をしていましたね。「追徴課税とならなくて助かったけど……あの絵、もっと高いはずだったのになぁ……うーん」と。忘れられないエピソードです。