遺言書は2通作ってもいい、「合法的」相続ノウハウとは?

「相続争いは、金持ちだけの話ではありません。『普通の家庭』が一番危険です」。
知られざる相続のリアルに踏み込み、相続本としては異例のヒット作となった『ぶっちゃけ相続』。著者は、相談実績5000人超を誇る相続専門税理士の橘慶太氏。「タンス預金は税務署にバレる」「贈与税がかからない4つの特例」「専業主婦のヘソクリは税務調査で大問題!?」「1億6000万円の節税ノウハウ」など、相続にまつわる法律や税金の基礎知識から、相続争いの裁判例や税務調査の勘所まで学ぶことができる。(相続手続に特化した新刊『ぶっちゃけ相続「手続大全」』は12月8日発売)。
今、「相続の最前線」で何が起きているのか。本日のテーマは遺言書。「コロナ禍をきっかけに相続はどう変わったか」「遺言信託の報酬を減らす方法」などなど、当事者しか知りえない相続のリアルをぶっちゃける。(取材・構成/前田浩弥、撮影/疋田千里)

コロナ禍をきっかけに「早めの相続相談」が増えている

――「税金」「法律」分野の中で『ぶっちゃけ相続』はとても思い切ったタイトルだと感じました。企画立案時から決まっていたのですか?

橘慶太(以下、橘):はい。編集担当の中村さんが私のYouTubeを見てお声がけくださったのが、2020年5月のことです。最初からもう、『ぶっちゃけ相続』という本をつくることはできませんか?」という切り出しでしたね。そこから一切ぶれずに、本を完成させることができました。

――橘先生にとっては初めての著書ですが、戸惑いはありませんでしたか?

橘:むしろ「インパクトがあって、いいタイトルだな」と思いました(笑)。ちなみに、中村さんからお声がけいただくきっかけになった動画は「贈与税が合法的にかからない方法3選」というタイトルのものです。

橘:こちらをご覧になって、「タイトルだけ見たら、脱税スレスレの方法を伝授する暴露系の動画かと思った。でも話の内容はとても理にかなっていて、納得感があった。すでに世に出ている相続の本では触れきれていない話を本にしたい」というのが最初のご提案だったんです。

――なるほど!

橘:つまり「タイトルを少し崩しながら、でも中身はしっかり」は、もともと私が大事にしているコンセプトとも合致していたんですよ。だから不安はありませんでした。もしも「下世話な暴露本を書いてくれ」というオファーだったら、たじろいだかもしれませんけどね(笑)

――2020年5月といえば、新型コロナウイルスの感染拡大による1回目の緊急事態宣言の真っ只中。相続の相談について、「コロナ以前」と「コロナ以後」で変化はありましたか?

橘:「早めに相続対策をしたい」と考える方が増えた印象があります。「早めに遺言書をつくっておきたい」とか「自分が死んだときに相続税がいくらかかるのかを見てほしい」といった依頼は、一気に増えましたね。コロナ禍は図らずも、「死を遠からず現実に起こりうること」としてとらえるきっかけになったのかもしれません。

――『ぶっちゃけ相続』の「はじめに」では、コロナ禍の以前から、相続トラブルは年々増えているというお話がありました。

橘:その通りです。政府の推計を見ても、日本の高齢化率は高まっていく一方です。亡くなる方の数が年々増えていくのは自明の理といえます。そして亡くなる方が増えれば、相続の件数もそれだけ増える。つまりトラブルが起きるリスクもそれだけ増えるということなんです。

――これからもっと増えるかもしれませんね。

橘:2018年に起こった相続争いの調停・審判のうち、遺産額1000万円以下が33%、5000万円以下が43.3%を占めます。相続争いは決して「お金持ちの家」特有のものではなく、むしろ「普通の家庭」にこそ起こるものです。ぜひ『ぶっちゃけ相続』を読んで、早めに相続の準備を進めていただきたいですね。