遺産分割の失敗例、相続は「税金」だけで考えると損します!

「相続争いは、金持ちだけの話ではありません。『普通の家庭』が一番危険です」。
知られざる相続のリアルに踏み込み、相続本としては異例のヒット作となった『ぶっちゃけ相続』。著者は、相談実績5000人超を誇る相続専門税理士の橘慶太氏。「タンス預金は税務署にバレる!」「贈与税がかからない4つの特例」「専業主婦のヘソクリは税務調査で大問題!?」「1億6000万円の節税ノウハウ」など、相続にまつわる法律や税金の基礎知識から、相続争いの裁判例や税務調査の勘所まで学ぶことができる。(相続手続に特化した新刊『ぶっちゃけ相続「手続大全」』は12月8日発売)。
今、「相続の最前線」で何が起きているのか。本日のテーマは「相続法」。「兄弟で土地を分割するときの最善策は?」「税金だけを考えると、かえって相続トラブルが起こる」、当事者しか知りえない相続のリアルをぶっちゃける。(取材・構成/前田浩弥、撮影/疋田千里)

執筆にあたり「相続法」を一から勉強し直した

――『ぶっちゃけ相続』は橘先生にとって初の著書です。執筆で苦労したのはどこでしょうか?

橘慶太(以下、橘):苦労したのは第1章、第2章ですね。ここは「税金」というよりも、相続法という「法律」の分野です。執筆するにあたっては「法律家の方が読んでも違和感のないものにしなければならない」と思い、一度、相続法そのものを勉強し直したんですよ。

――生半可な知識で書くわけにはいかない部分だったのですね。

橘:私の言い回しによって法律的な意味合いが変わってしまうと、法律の専門家から「この表現はおかしいよね」という指摘が入るでしょう。それ自体がもちろん、私の信用問題になりますし、同時に、読者の方に「法律的観点から見たら適切でない情報を提供してしまう」ことでもあります。

――責任重大ですね。

橘:「万が一」の可能性を一切排除すべく、法律を勉強し直したうえで執筆したので、第1章、第2章がいちばん大変でした。

――税理士として日々の業務にあたりながら、どのような勉強をされたのですか?

橘:相続法の第一人者・潮見佳男先生の『詳細 相続法』(弘文堂)という本を、ただひたすらに読み込んだんです。端から端まですべて読み込んで、わからないところを調べ直しながらもう一度読み込んだら、1カ月かかっちゃいましたけどね(苦笑)

――『詳細 相続法』の情報を調べてみました。600ページ超の大著ですね!

遺産分割の失敗例、相続は「税金」だけで考えると損します!

橘:これをすべて読み、必要なところを抽出して、法律に馴染みのない方向けの文章にしたのが、『ぶっちゃけ相続』の第1章、第2章なんです。

――第1章は13項目、第2章は7項目の計20項目です。どのような基準でこの20項目を選んだのですか?

橘:みなさんが実生活で直面するであろう項目を選んだつもりです。教科書に載っている基本的な論点の中でも、「10年以上実務に携わっているけど、1回も出てきたことないよね」というものは意外とたくさんあるんですよ。

――たとえば?

橘:近年、相続税の「物納」は非常に数が減っていますね。「物納」は、現金での納税が難しい場合に、土地などの現物での納税を認めることを指します。

――そんなことができるんですね!

橘:昔はよくあったそうですが、現在、物納制度の審査はとても厳しくなり、認められるのは、日本全国でも年間で60件ほどです。物納したいと申請しても「いやいや、あなた、お金で払えるでしょ」と、認めてくれないんですね。

――執筆にはどれくらいの時間がかかったのですか?

橘:企画が通ってから2カ月ほどですね。そこから編集担当の中村さんに読んでいただいてフィードバックをもらい、さらに2カ月ほどブラッシュアップしました。