今仕込みたい「強い株」#12Photo:PM Images/gettyimages

高い配当利回りや連続増配だけに注目するのは危険だ。収益が大きく落ち込めば減配や無配転落の可能性もあるからだ。そこで注目したいのが、配当を年々増やしながら、売上高や利益も安定成長している企業だ。特集『今仕込みたい「強い株」』(全15回)の#12では、配当増と株価上昇の一挙両得を狙える企業リストを発表する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

連続増配トップの花王や高利回りJTも失速
「配当」だけで選ぶと想定外の損失も

「32期連続増配の花王の株価が3年で32%下落」――。

 株式投資の利益には、値上がり益(キャピタルゲイン)と配当金(インカムゲイン)がある。日本企業も株主還元を重視するようになり、配当利回りの高い銘柄が増えてきた。だが、配当狙いであっても「利回りの高さ」や「増配実績」だけで選ぶのは避けた方がいい。

 なぜならば、高配当株の中には業績悪化により株価が下落し、結果として配当利回りが上昇しているケースが少なくない。また、増配を続けていても、業績が伸び悩めば株価は大きく調整する。

 例えば、連続増配の日本最長記録を持ち、今期も32年連続増配を見込む花王も、ここ3年間は株価が低迷している。2018年10月に9387円の高値を付けたが、直近の株価は6314円(21年11月12日終値)。実に3年間で32%も下落した。

 その間の1株当たりの受取配当金の合計は402円になるが、株価下落による損失の方が圧倒的に大きい。同期間の日経平均株価は24%も上昇しており、相場環境は良好だったにもかかわらず、キャピタルゲインとインカムゲインの合計の投資成績は大きくマイナスになっている。

 花王はESG(環境・社会・ガバナンス)評価が高く、担当アナリストほぼ全員が「強気」推奨する企業である。優良企業であることは間違いないだろうが、数字を見ると、この5年程度は売上高が伸びていない。昨年はコロナ禍でインバウンド消滅という要因もあったが、直近四半期も2桁減益となっている。

 高配当株も同様である。高利回り株の代表格だったJTは、業績が落ち込んだことで、株価は5年前の半値水準で推移している。

 これらの教訓から学べることは、配当目的でも業績が落ち込んでいる企業への投資は危険ということだ。

 では中長期で高配当を享受でき、株価の上昇も狙える銘柄はどうやって選べばいいのだろうか。次ページでスクリーニングの方法と増配成長候補70銘柄を一挙に紹介する。