感動小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』では、「期待」「不安」「選択」「好意」「悪意」「女王」「迷い」「決意」という8つの物語を通じて、多くの人が抱えがちな不安や悩みの解決法を説く。この自身初の小説の刊行を記念し、小説を書くに至った経緯や物語に込めた思い、作品に出てくる珠玉の言葉の一部などをお届けする。
制約はあったほうがいい
今回、『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』というアテクシ初の小説を書きました。
もともと小説を書きたいという思いはありましたが、アテクシは目的がないと行動できないタイプなので、いつ発表できるかわからない状況で小説を書く自信がありませんでした。
ただ、おかげさまで「1秒シリーズ」をたくさんの読者のみなさんに読んでいただき、今回はそのスピンオフとして小説を出すという企画が実現しました。
自己啓発やエッセイで「役立つ」「刺さる」文章を書くのとは違い、小説にはいろいろとお作法があります。
それらをうまく使いこなしたうえで表現するのは、アテクシにとって初体験でした。
とはいえ、「初めてだから」「慣れてないから」という言い訳なしにいいもの書けたと自負しています。
これまでは、思いついた情報を3行書けば、すぐに3行分の原稿になりました。
しかし、小説の場合、先にストーリーを構想する必要があり、思いつきのまま書くわけにはいきません。
ただ、事前に編集者から「この言葉を使ってほしい」というテーマをいただき、形式や締め切りも設定されたので、スムーズに執筆を開始することができました。
何もないところから「ストーリーを書いてください」と自由度が高すぎると、かえって難しく感じてしまいます。
むしろ、注文がたくさんあったほうが個人的には書きやすいんです。
今回は提示された言葉の中からストーリーを組み立てるという決まりごとがあったので、一番伝えるべき、その言葉から逆算してストーリーを考えることができました。
もちろん、ストーリーを構想するのは、すんなりとはいきません。
その分、とても面白い作業でもありました。
ちょっとしたトリックを思いつき、それがうまくハマったときなど、難しいパズルをくみ上げたときのような爽快感がありました。
「泣けるストーリー」ってなんだろう
これまでアテクシは、最愛のパートナーを亡くすなど、いろいろつらい思いや悔しい思いを経験してきました。
いつかこの気持ちを物語として書き残したいと思いつつ、書き方がわからずに構想を温めるだけの時期を過ごしてきたのです。
そして今回、満を持して小説を書く機会を得ることができました。
執筆しながら、「あのとき、こうだったな」と、自分の感情が刺激されることが何度もあり、一人ひとりの登場人物に思いを込めながら8つの物語を仕上げていきました。
この作品を書くにあたって、編集者からは「泣けるストーリーをお願いします」と注文をもらい、「そもそも泣けるってどういうことだろう?」と考える時間を持ちました。
「泣けるというのは、主人公や誰かが亡くなったり、悲惨な目に遭ったりするストーリーにすることではなく、命のこもった主人公が一生懸命生きる姿を描くことだ」
そう考え、ストーリーを組み立てていきました。
この物語には、読んだ読者のみなさんが生かせるような、ちょっとした仕かけも加えています。
純粋に物語として楽しんでいただき、余韻みたいなものを感じていただけたら嬉しいですし、「こんなことがあっても、なんとかやっていける」という希望が読者のみなさんに伝わればいいな、と願っています。
(構成:渡辺稔大)