仕事、人間関係…周囲に気を使いながらがんばっているのに、なかなかうまくいかず、心をすり減らしている人も多いのではないだろうか。注意しているのに何度も同じミスをしてしまう、上司や同僚といつも折り合いが悪い、片付けが極端に苦手…。こうした生きづらさを抱えている人の中には、「能力が劣っているとか、怠けているわけではなく、本人の『特性』が原因の人もいる」と精神科医の本田秀夫氏は語る。
本田氏は、「生きづらさを感じている人は『苦手を克服する』ことよりも、『生きやすくなる方法をとる』ほうが、かえってうまくいくことも多い」と言う。
本田氏が精神科医として30年以上のキャリアを通して見つめてきた「生きづらい人が自分らしくラクに生きられる方法」についてまとめた『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』から、「失敗を引きずる」という悩みについて、一部内容を抜粋、編集して紹介する。(初出:2021年12月11日)
つい「ひとり反省会」をしてしまう
「仕事でミスしてはいけない」と強く思っていると、周りの人に責められているわけではないのに、自分のなかで失敗が帳消しにならず、ずっと引きずってしまうことがあります。
「気にしないようにしよう」と思っても、なかなか切り替えられません。
このタイプの人は悩むときもストイックになりやすく、失敗にとことん向き合おうとする傾向があります。
「すんだことだからしかたがない」「どうリカバリーするかを考えたほうがいい」ということは理解できる。でも、たびたび失敗を思い出して、「なんであんなことしてしまったんだろう」と自分を何度も責めてしまいます。
一度反省したらおしまいにする
失敗したときは、失敗に向き合うよりも、ちがうことに気持ちを向けるほうが立ち直りは早いのです。
プロスポーツの選手を思い浮かべると、わかりやすいかもしれません。
たとえば、サッカーの試合などでは、「絶対に負けられない一戦」でも、負けてしまうことがあります。
負けた直後は、選手たちも悔しがっていますが、案外あとに引きずらずに気持ちを切り替える選手が多いと思います。
というか、試合に負けたときでも、早く気持ちを切り替えて、次の試合に集中できる選手が強くなれるのです。
ひとつの失敗をいつまでも気にしないで、一度反省したらおしまいにする。何度もつつかない。失敗を無理に乗り越えなくてもいいと考える。切り替えるために、好きなことをする時間をつくる。
そのような行動習慣を身につけることで、失敗から立ち直るまでの時間が短くなっていきます。
好きなことは遊びでも趣味の活動でもかまいません。ちょっとお菓子を食べて気分を変えるというのもいいでしょう。
ただし、お酒を飲んで気晴らしをするのは要注意です。
ときどき気分転換で飲酒する程度ならよいのですが、飲酒でしかストレス発散できずに毎日多量に飲むようになると、アルコール依存のリスクが高まります。飲みすぎには気をつけましょう。