遠い国だった日本、両国関係が激変した50年
来年、2022年は日中国交正常化50周年を祝う記念すべき年だ。
50年前の中国は文革時代にあった。当時私は10代半ばで、黒竜江省で日中国交正常化を迎えたあの瞬間を、拙著『この日本、愛すればこそ』(岩波現代文庫)で次のように記した。
<1972年9月のある日、野良仕事を終えて茅葺きの寮に戻り、いつものようにラジオを聞きながら食事をしていると、中日国交正常化のニュースが耳に飛び込んできた。野良仕事の傍ら、新聞社の通信員も兼ねていた私は、とうとう日中間に横たわれる重大な障害が取り払われ、日中間が新たな時代を迎えつつあるのを肌で理解した。しかし、農村脱出ばかりを考えていた私、いや私の周辺にいた若者全員にとって、このニュースは米国人による月面着陸のような出来事だった。非常に大事なニュースだとはわかっていても、所詮、自分たちには何の関係もない一つの事件にすぎなかった。
そのときは、日本が私の人生を変える重要な存在になろうとは夢にも思わなかった>
当時「月にあると思うほどに遠かった」日本に移住して、すでに36年たった。私を含む在日中国人の多くにとっては、日本はいまや生活の基盤であると同時に、運命共同体そのものでもある。その分、日中関係に普通の中国人より数倍も関心をもっている。正直に言うと、日中関係の行方に対しては、大きな心配を抱いている。