改正大気汚染防止法における
飛散対策強化の5つのポイント

「大気汚染防止法の一部を改正する法律」には、まずもって、建築物または工作物の解体・改造・補修工事(=総称して解体等工事とよぶ)に伴うアスベストの飛散を防止するため、受注者は解体等工事の前に、規制対象のアスベスト含有建材(これを特定建築材料とよぶ)の有無の調査(=事前調査)を行うべきこと、届出対象の特定建築材料が使用されていることが判明した場合は、解体等工事の発注者が都道府県等に届出を行った上で、解体等工事の施工者が作業基準を遵守して除去すべきことが明記されている。

 そして、2021年4月以降の対策強化について主なものを挙げると、次の5つとなる。

(1)対象となる建材の拡大:アスベストが含有されている全ての建材が対象となり、これまでは対象となっていなかった「石綿含有成形板等」が含まれた。この成形板には実にさまざまな種類があり、屋根や外壁に使用されるスレートボードや天井の吸音材ロックウール、サイディング、床タイル、壁紙ほかのシートなどがあるため、まさに日常生活で身近にある建材は全て規制の対象となったと認識すべきだろう。

(2)事前調査の信頼性の確保:アスベストの有無を確認する「事前調査(書面調査、目視調査、および含有が明らかにならなかった場合の分析調査または石綿含有とみなす場合)」の方法も法律で明確に定められ、これら事前調査に関する記録を作成して、解体等工事終了後3年間は保存することが義務付けられた。ちなみに、2023年10月以降は調査を適切に行うために「必要な知識を有する者」による事前調査の実施も義務付けられることになっている。

(3)作業記録の作成・保存:これは文字通り一連の作業に関する記録を作成し保存することの義務化で、加えて発注者への報告も義務付けられた。併せて「必要な知識を有する者」による取り残しの有無等の確認も義務付けられている。念には念を入れよ、徹底してアスベスト飛散を封じ込めよという強い意思が感じられる対策強化である。

(4)直接罰の創設:解体等工事が短期間で終了してしまうようなケース、つまり作業基準適合命令を出す前に工事が完了してしまうような場合を想定し、適切な隔離等をせずにアスベストの除去作業を行った場合等の直接罰が創設された。事前調査結果の報告義務違反については30万円以下の罰金、届出対象特定工事にかかる除去等の措置の義務違反については3カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が創設され、直接罰ではないが併せて新法第18条の19に規定されている作業基準適合命令に違反した場合も、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金という厳しい罰則が規定されている。

(5)事前調査結果の報告(2022年4月以降):床面積の合計が80平方メートル以上の建築物の解体工事、および請負代金の合計額が100万円以上の建築物および対象工作物の改造、補修工事について、アスベスト含有建材の有無にかかわらず、元請け業者または自主施工者が事前調査結果を各自治体および所轄の労働基準監督署に報告することも義務付けられることになっている。事前調査結果の報告については、今後電子申請システムの整備も実施される予定なので、申請の不備などが発生しないよう、今から留意しておきたい。