その他、解体等工事の元請け業者または自主施工者が工事を実施する際には、事前調査結果を公衆の見やすい場所に掲示するとともにその写しを現場に備え置くことも義務付けられた。細かいことだが、掲示物(板)の大きさも長さ42.0cm以上、幅29.7cm以上(A3サイズ以上/縦横問わず)と決められている。

 なお、これらの詳細全容については、2021年3月に公表された「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」(370ページの「大作」である)を参照されたい。
https://www.env.go.jp/air/asbestos/full001_1.pdf

不動産会社および売り主・買い主が
心得るべきこととは?

 現状では、アスベストを含む建築物および工作物の市場流通を制限・禁止するような強い規制は実施されてはいない。だが、宅建業法では、売り主が所有する建物についてアスベスト調査を実施した記録がある場合について、アスベスト使用の有無にかかわらず、その結果を買い主に説明する義務がある。築年数をある程度経た物件については、アスベスト含有建材の使用有無が対策費用も含めてクローズアップされる可能性もあり、事前調査によって明確にしておくことは、流通の安全を一定程度担保するものとして前向きに捉える必要がある。

 実際に建物の流通に伴って改築・改装・補修などが行われるケースは少なくないため、物件の建築年から推察してアスベストが使用されている可能性が高い住宅などについて取り扱うことになった際は、これらの規制が強化されていることを情報共有し、関係する施工業者などが強化された規制について対応漏れが発生することがないよう、細心の注意を払う必要が出てくる。

 特に事業用不動産、投資用不動産など第三者が利用している場合は、建物の所有者はアスベストの除去、もしくは封じ込め(造膜剤の散布など)、囲い込み(アスベスト含有建材を覆うなど)の対策を行う必要があるから、必要な調査および調査結果に基づいた適切な対策を講じているかいないかで流通時の価格形成要因や流通そのものの阻害要因になることは大いに想定される。

 アスベストの危険性は大変高いもので、対応を一つ間違えると関係者にも被害が及ぶということを強く認識し、「大気汚染防止法の一部を改正する法律」の施行を機に、日常業務においても2006年8月以前に竣工・着工した建物を取り扱う場合、売り主・買い主についても同様のアスベスト対策を意識した対応が求められる。

 アスベストがわずかでも使用されている建物の取引・解体・改修には今後細心の注意を払いたいものだ。

(LIFULL HOME’S総合研究所・副所長チーフアナリスト 中山登志朗)