11月29日、山口フィナンシャルグループ(FG)の吉村猛取締役が東京都内で会見を開き、自身が6月に会長兼CEO(最高経営責任者)を解任されたプロセスに重大な問題点があると訴えた。「吉村氏は経営トップとしてふさわしくない」と結論付けた山口FGの現経営陣は、吉村氏の主張をどう受け止めたのか。取締役監査等委員である国政道明弁護士が、ダイヤモンド編集部のインタビューで激白した。(ダイヤモンド編集部 田上貴大、名古屋和希)
山口FG社外取が吉村氏の主張に徹底反論
CEO解任は「クーデターではない」
――吉村猛取締役が、自身の会長兼CEOの解任プロセスにおける違法性などを訴えました。率直な感想はいかがでしょうか。
吉村氏は四つの論点を指摘しましたが、それらについて、私の考えを述べさせてもらいます。
一つ目の指摘は、山口フィナンシャルグループ(FG)の一部取締役が記者会見や株主総会で虚偽の説明を行い、株主や金融庁を欺いて事実を隠蔽(いんぺい)しているという指摘です。私の認識としては、虚偽の説明を行ったり、欺いたり、事実を隠蔽したりしているとは思っていません。
二つ目が、吉村氏解任の実態は、地銀改革を嫌う守旧派が起こした違法なクーデターであるという指摘です。
まず、山口FGの取締役会には、社外取締役5人と社外の監査等委員が含まれています。吉村氏は自分が選んだ5人の社外取締役を守旧派と言っていますが、そこに疑問があります。なぜ守旧派を自分で選んだのか。それは自分の眼鏡違いだったということではないのか。吉村氏には、「自分が選んだ5人を守旧派と言っては駄目でしょう」と言いたい。
加えて、吉村氏は「クーデター」という言葉を用いました。私の認識では、クーデターは「一つの組織内で二つや三つの派閥に分かれて権力争いをしており、片方の多数派が片方を降ろすために工作をする」という意味を持っています。
しかし今回、吉村氏の代表取締役会長の選任議案に、本人以外は誰も賛成していない。9対1で反対なんです。これはクーデターと言えるものではありません。
それから三つ目の、山口FGがまとめた調査報告書はクーデター首謀者が主宰した結論ありきの恣意的なものだ、という指摘です。しかし吉村氏は、社内取締役である福田進氏が調査本部長になることも含めて、調査本部の立ち上げに賛成しています。そこには外部の弁護士3人がアドバイザーとして参加しており、結論ありきで恣意(しい)的だという評価は当たらないのではないか。
最後の四つ目が、中立な第三者委員会の設立と再調査についてです。吉村氏は以前、取締役会でこのことを動議として提案したことがあり、取締役会でも審議しました。
今回は吉村氏自身が、日本弁護士連合会の「第三者委員会ガイドライン」を引き合いに出して、独立性や中立性のある第三者委員会の設立が相当であると主張しています。
ただし、ガイドラインをよく読むと、犯罪行為や法令違反、社会的批難を招くような不適切な行為や不祥事があった場合に、第三者委員会を立ち上げることが妥当だと記載されています。本件は、それらに該当しないために、社内の調査委員会で客観的な調査をすれば良いと認識しています。
――「虚偽の説明」について吉村氏は、事前に一部取締役の間で自身の非選任を議論するメールのやりとりがあったにもかかわらず、臨時取締役会では社外取締役の個別判断で選任しなかったと説明したことが、うそだと主張しています。国政氏の認識はいかがですか。
吉村氏の主張は、福田氏が中心になって根回しを行い、自分の代表取締役会長選任を否決したということだと思います。
私は自分の携帯番号を他の取締役と交換したことはありませんので、連絡をもし受けるとしたら、メールか弁護士事務所の固定電話だけですが、私自身はそういうことをした事実はありません。他の社外取締役がどうだったかということは分からないです。
――では、国政氏は「吉村降ろし」の動きがあることは、直前には把握していなかったのですか。