その背景には複数のサウナ愛にあふれた人々の実直かつ地道な活動があるが、多くの方が「突然周りでサウナがはやり始めた」「最近サウナについての話題を目にする機会が増えた」といったように、ブームの到来を何となく肌で感じてはいるものの、詳細に至るまではつかみきれていないことだろう。そこでまずは「なぜサウナブームが到来したか?」について、大きな要因として考えられるトピックスをいくつか例示する。

「サ道」や「サウナイキタイ」が築いた
新たなカルチャー

 近年のサウナブームをけん引した存在として真っ先に挙げられるのが、作家・タナカカツキ氏の手掛ける「サ道」シリーズとユーザー参加型のサウナ専用検索サイト「サウナイキタイ」の存在だろう。

「サ道」シリーズの発端となったのは11年に刊行された同名の体験記だ。後に『サ道 心と体が「ととのう」サウナの心得』と改題された上で増補改訂版も刊行された同書では、タナカカツキ氏本人がサウナという文化に触れ、のめり込んでいく過程やサウナ利用のイロハがユーモアを交えつつ分かりやすく解説されている。

 14年には『マンガサ道~マンガで読むサウナ道~』として漫画版の連載が始まり、19年にはTVドラマ化も果たしている。テレビ東京系の深夜枠「ドラマ25」内で映像化され、主演の原田泰造氏をはじめ、かねての“サウナ好き俳優”たちが演技とオフの表情が入り交じるリアルな利用風景を演出した。

 サウナブームの過程でバズワードとして頻出する「ととのう」も、同シリーズが初出となるフレーズだ。サウナ→水風呂→休憩のサイクルを繰り返すことで得られる陶酔感・リラックス感を「(心身の調子が)整う」と表現したことで、言語化の難しい“あの快楽”に共通項を見いだし、サウナの良さを広めることに貢献したと言っても過言ではないだろう。

 加えて21年11月現在、9727件もの施設情報を保有する国内最大級のサウナ検索サイト「サウナイキタイ」のローンチも、近年のサウナブームを後押しした存在として挙げられる。

 これは4人の純粋なサウナ愛好家が17年に立ち上げたサービスであるが、同サイトが登場するまでは全国の施設情報を某グルメサイトのように体系的に網羅したデータベースは存在しなかった。

 サウナー有志が発信する純粋なサウナ愛が話題を呼び、「サ道」シリーズ等と連動して全国各地に点在するサウナ好きの気持ちをWeb上に呼び集めたのが、同サービスの成り立ちだ。

 20年にはコロナ禍を前に苦境に立たされた施設を支援するオンラインストア「サウナマーケット」の立ち上げや、休業・短縮営業情報などの更新呼びかけも行い、業界をファン目線から支える動きも見せた。

 特に1回目の緊急事態宣言発令下においてはサウナ口コミ投稿機能「サ活」を一時的にクローズするなど、あくまでも時流に合わせたサポートを行う姿勢を貫きながらポータルサイトとしての責務を最大限に果たしたことも印象的だ。