今、日本では空前のサウナブームが起きています。
芸能人や著名な経営者にも「サウナ好き」を公言する方が増え、また身近なビジネスパーソンで、精力的に仕事をこなすトップエリートと呼ばれる男女がこぞってサウナに通っています。なぜ、仕事ができる人は、サウナにハマるのでしょうか?
サウナを初めて科学的エビデンスに基づいて解説し話題の書「医者が教えるサウナの教科書」(加藤容崇著)より、最新研究に基づいたサウナの脳と体に与える効果と、ビジネスのパフォーマンスを最大化する入り方を、抜粋して紹介していきます。サウナを利用する際には、きちんとコロナ対策を行なっている施設で、皆さん自身も万全の対策を行って楽しんでください(「医者が教えるWithコロナ時代の「サウナの入り方」10ヵ条とは」も参考に!)。また、日本サウナ学会のHPでは、コロナ対策をきちんと行っているサウナ施設のリストを公開していますので参考にしてください。

【サウナの科学】サウナがうつ病に効果があると考えられるこれだけの理由Photo: Adobe Stock

 うつ病を発症する人は、軽度のものから重度のものまで合わせると、年間約500万人にも及ぶといわれています。さらに昨年からの新型コロナ禍による、経済的な困窮や孤独感の増加などから、さらにうつ病リスクは高まっていると思われます。

 実はサウナは、うつ病のリスクを軽減するというデータがあります(Cardiovascular and other Health Benefits of Sauna Bathing: A Review of the Evidence, Mayo Clinic Proceedings, 2018)。この研究では、週に4~7回サウナに入る人は、週に1回入る人よりも、78%うつ病にかかるリスクが低いとされています。サウナが肉体的なものに効果があるのは、なんとなく理解しやすいと思いますが、精神的なものにまで好影響を与えるというのは驚きかもしれません。

 私も、なぜサウナがうつ病のリスクを低下させるのか不思議に感じました。「うつ病の人は単にサウナへ行く気力がなくて行けないから、サウナーにはうつ病患者が少ないというデータが出ているだけでは? 本当に検証するには、うつ病の人にサウナに入ってもらって本当にうつ病が良くなるのか、逆の研究が必要だ」と思っていました。

軽いうつ病の人を改善させるというデータも

 私自身、一度、うつ病を患っている方と一緒にサウナに入ったことがあります。その方は、長年うつ病を患っていらっしゃって抗うつ薬が手放せない状態だったそうです。私が出演したテレビのサウナ特集をみてサウナに入ったところ薬がなくても数日間は非常に調子良く過ごせるようになったとのことでした。実際に一緒に入ってみると、2セット目以降は別人のように動きが速くなり、話し方もスムーズになりました。あまりにも変化が劇的だったため、とても驚きましたが、もちろん、これは被験者が1人しかいないため、これだけで科学的な議論をすることはできませんし、効果があると断定はできません。

 ただ、軽度な抑うつ状態にある患者さんを対象に行われた研究では、サウナを繰り返す(60度のドライサウナに1日1回週5回計20回)ことで、空腹感や身体的愁訴、リラクゼーションのスコアが改善したという報告があります。このレポートでは、食欲不振と自覚的愁訴がある、軽度のうつ病患者に対して、サウナの反復投与が有用だと結論づけています。(Repeated Thermal Therapy Diminishes Appetite Loss and Subjective Complaints in Mildly Depressed Patients,Psychosomatic Medicine,2005)

 「サウナ」と「うつ病」の研究については、まだまだこれからです。私自身も注目していきたいと思っています。

*なお、現在「うつ病」と診断されている方は、サウナに入る前に必ず医師の指示を仰いでください。

監修 慶應義塾大学医学部特任助教・医師 加藤容崇先生
北海道大学医学部医学科を経て、同大学院(病理学分野専攻)で医学博士号取得(テーマは脳腫瘍)。北海道大学医学部特任助教として勤務したのち渡米。ハーバード大学医学部附属病院腫瘍センターにて膵臓癌研究に従事。帰国後、慶應義塾大学医学部腫瘍センターや北斗病院など複数の病院に勤務。専門はすい臓がんを中心にした癌全般と神経変性疾患の病理診断。

加藤容崇先生、かとうやすたか先生
加藤容崇(かとう・やすたか)
慶應義塾大学医学部特任助教・日本サウナ学会代表理事
群馬県富岡市出身。北海道大学医学部医学科を経て、同大学院(病理学分野専攻)で医学博士号取得(テーマは脳腫瘍)。北海道大学医学部特任助教として勤務したのち渡米。ハーバード大学医学部附属病院腫瘍センターにて膵臓癌研究に従事。帰国後、慶應義塾大学医学部腫瘍センターや北斗病院など複数の病院に勤務。専門はすい臓がんを中心にした癌全般と神経変性疾患の病理診断。
また、病理学、生理学にも詳しく、人間が健康で幸せに生きるためには、健康習慣による「予防」が最高の手段だと言うことに気づき、サウナをはじめとする世界中の健康習慣を最新の科学で解析することを第二の専門としている。サウナを科学し発信していく団体「日本サウナ学会」を友人医師、サウナ仲間と作り、代表理事として活動中。『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社刊)が初めての著書となる。