黙って相手の話を
5分ひたすら傾聴する

 黙って人の話を聴く。私がビジネススクールなどで教えるのは、5分黙って人の話をひたすら聴くことです。初対面の人とペアになってもらい、相手の話を5分間聴く。

 うなずくときに声を出すのはいいけれども、基本は黙っている。相手の話を丸暗記する勢いで、5分傾聴するのです。やってみるとわかりますが、これ、結構地獄です。知らない人の自己紹介を5分聴くのはかなりつらい。

 皆さんに時間を計ってもらって、何分くらいで他のことを考えたり、口を出したりしたくなったかを聞いてみると、1分もたない人が結構います。

 もちろん、人にもよります。面白い人の話なら何時間でも聞けます。しかし総じて黙って人の話を聴くのはつらいものです。皆さんも、5分間、集中して相手の話を聴く体験をしてみてください。沈黙の時間感覚がつかめるようになります。

 もうひとつあります。あなたの語りは、「間」をじゅうぶんにとっているでしょうか。エレベーターのドアが閉まるまでの時間は平均4秒だといいます。私たちはそのたった4秒が待てずに、「閉」のボタンを押そうとする。どれだけ待つことが苦手なのでしょう。

 話の「間」も同じです。4秒「間」をあけると、相手が「おや?」と思うほど長く感じられます。しかし、そのぶん、「じっくり考えているな」という印象を与えることもできます。説得力のある人は、「間」を長くとる傾向があります。相手にわずかに考える隙を与えながらしゃべるのです。

 傾聴をめざすあなたは、沈黙を恐れてはいけません。たとえ相手が黙っていても、「いかがでしょうか」「今のはわかりにくかったですか」などと聞いてはいけません。沈黙恐怖症は、傾聴の敵なのです。

 相手が沈黙しているときは、あなたもじっと黙ってみる。やるべきことはペーシングです。さりげなく相手と同じポーズをとって波長を合わせるのです。相手が首を傾げたら、気づかれない程度にあなたも首を傾げます。ゆっくりと呼吸をしていたら、あなたも呼吸をそのペースに合わせてください。

 沈黙は、雄弁です。沈黙のときの動き方ひとつで共感を生むかどうかが決まります。いつの時代も、沈黙は金なのです。