報ステCM「ジェンダー平等は時代遅れ」

 ここ数年は毎年いくつもの広告表現の炎上騒ぎがあるが、個人的に2021年に記憶に残っているのはテレビ朝日「報道ステーション」のCM動画だ。3月後半にYouTubeで公開され、すぐに大きな批判が巻き起こった。

 仕事から帰宅した若い女性がオンラインコミュニケーションツールで誰かに話しかけているという設定。会社の先輩が産休明けで子どもを連れてきたといった話題の後に、「どっかの政治家が『ジェンダー平等』ってスローガン的に掲げてる時点で、なにそれ、時代遅れって感じ」と話す内容だった。

 今振り返っても演出の意図がわかりづらいと感じるが、そのまま受け取るのであれば「今さらジェンダー平等を提唱するのは時代遅れ(なぜならもうジェンダー平等の社会はもうほとんど達成されているのだから)」という意味合いと思われ、ジェンダーギャップ指数156カ国中120位の日本でそれを言うのはいささか早計だろう。日本が国際的な時流に乗り遅れているという意味で「日本全体が時代遅れ」という意味であれば、その意図は読み取りづらかった。

 また、これは個人的な感覚だが、笑顔でハイテンションのまま先輩の産休や化粧水について話す演出が、「若い女性はこういう感じだろう」という上の世代からの固定観念に満ちているように感じられ、見ていて居心地が悪かった。報ステを好む設定の同年代の社会人男性があのように演出されることがあるだろうか。

 確かに、若い世代のみならず「ジェンダー平等なんてピンとこない」と思っている人はいるだろう。しかしジェンダー問題に敏感な層は一定数確かにいて、だからこそ数々の炎上が起こってきた。テレ朝は炎上後にこの動画をすぐに削除したが、炎上する可能性を視野に入れていなかったのだとすればうかつだとしか思えない。