ここまで聞いて、「勉強結果に着目させて、足りないところを埋めるように促すのが、成績を上げる近道ではないか」と考える人も多いことでしょう。それもひとつの考え方かもしれません。

 しかし、親子できたことノートで大切にしている考え方は、「子どもの主体性」です。人に言われたからではなく、自分で考え、自ら行動を見出していってほしいのです。そして、どんなささいなことと思われる小さい行動の変化であっても、できたことを磨いて新しい行動を見いだす習慣が根付いていることが大きい成果を生み出すのです。

 まさに「生きる力」を養成していると言っても過言ではありません。そして、親としてできることは、子どもが自分で考えるということを支援する「質問(問いかけ)」です。

 親子できたことノートには、毎日できたことを書く、できたことメモ欄に加え、週1回はベストできたことを選び、さらに“次の行動計画”を書く欄があります。

子どもの“新たな行動”を引き出す親からの問いかけ

 その週で一番いい!と思ったことを「ベストできたこと!」として1つ選んでください。選び方は直感でOKです。「どれが一番好きなできたこと?」と聞いてもいいでしょう。

 あくまで子どもの意見を尊重することが大切です。決して誰かと比較して優れたもの(たとえばテストで100点だった)だけに着目して親から誘導しないように注意してください。その1つのベストできたことについて、親から子どもに問いかけをすることで新たな行動を見いだしていきます。

 では、「勉強前に、散らかっていた部屋の掃除をした」というベストできたことから新しい行動を引き出した事例で説明しましょう。

【1.できたことを詳しく聞く】

 できたことの詳細を、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように」に沿って聞いていきます。有名な4W1Hですね。

○いつやったの?(When)「今日、家に帰ってきたとき」
○どこでやったの?(Where)「自分の部屋で」
○誰とやったの?(Who)「誰に言われたわけでもなく」
○何をしたの?(What)「使わなくなった参考書やプリント類を」
○どうやったの?(How)「分類して捨てたり並べたりして整理した」