これがトーナメント戦しかなければ、上手い子と下手な子のレベルが広がる一方。「今日負けたら終わり」という試合にサブ組は出せないので、トーナメントの仕組みだけでは全体でレベルアップするのが難しいのです。

日本の全スポーツがトーナメント戦からリーグ戦へ移行すべき、根深い事情

 また、同じレベル感のチームとリーグ戦を戦うことが大事ですね。拮抗した試合の方が成長しますから。トーナメント戦だとこれができない。

 過去2年間の全国のトーナメント戦の1000試合を無作為に抽出したら、3分の1が5点差以上の結果なんですよ。そうすると、負けたチームも勝ったチームも、得られるものが少なくてやる意味がない。強いチームは楽に勝てるわけだし、弱いチームは途中で投げ出してしまう。これでスポーツを楽しめていると言えるでしょうか。できる限り、レベル分けしてそれ相応の相手と切磋琢磨して成長してほしいのです。

成長と結果の2つを
追い求める難しさ

 我々はこれまで、トーナメント方式の勝利至上主義の中で育ってきました。選手を怒鳴る監督や選手を干す監督がいますが、彼らもまたこの仕組みの犠牲者と言えるでしょう。勝利至上主義のなかで、勝たないと評価されないし、チームに選手が来てくれない。そのために目の前の結果を優先してしまう。彼らも必死なんでしょう。ですので、変えるべきは世の中の仕組みなんです。

 成長と結果は二律背反することも多いです。JFAアカデミー福島をつくったフランスの指導者、クロード・デュソーさんも「本質を追求することと、一見二律背反する勝利、これを苦しい中でもやるのがこの育成の仕事」と、指導の難しさをお話されていました。試合に出場することは選手にとっての幸福には間違いないのですが、それでいて負けて良いとは考えていません。全員が出場しながら目の前の勝負に勝つ。そういった仕組みをプレミアリーグU-11で構築していきたいです。

*「FC市川GUNNERS 代表・幸野健一氏に聞く(4)」に続きます。