私は17歳の頃にイギリスに行った経験がありますが、どんなに田舎のクラブであっても、「サッカークラブ=グラウンドとクラブハウスを持っている」のが当たり前でした。クラブの哲学はそのハードに宿るもの。今の日本には、借り物のハードしかありませんよね。学校や地域の施設は、いろんなチームに入れ替わり立ち替わり利用される。時間で区切られて集合・解散が繰り返され、人々が集う場ではなくなっている。やはり生涯スポーツを実施するには、こういった施設が大切なんですよね。

部活は学校でやるべきか?日本に地域総合型スポーツクラブが不可欠な理由

 とはいえ、人口49万人の市川市で、照明付き人工芝フルピッチは今のところうちしかない。照明なしだと市が所有する陸上競技場があります。それでも2面しかありませんよね。隣の船橋市は人口64万人ですが、それでも2面しかない。これは少ないと感じませんか?

 同じように人口63万人のルクセンブルクのサッカー協会に問い合わせると、「少なくとも100以上はある」との返答がありました。それがヨーロッパの基準なんですよ。日本では学校にグラウンド、体育館、プールなどの施設があり、すべて自分たちで抱え込んでしまっている。もっと地域が使えるように還元した方が良いと思うんですよね。公立学校にナイターを付けると夜は社会人が使えます。新しい施設をつくるだけでなく、こういったアイデアで効率的に回せるのではないでしょうか。

ヨーロッパでは当たり前
クラブに根付いたメソッドと経営

部活は学校でやるべきか?日本に地域総合型スポーツクラブが不可欠な理由

 我々のチームでは、育成メソッドやプレーモデルというものを整えています。“チームの型”というものですね。これまでのサッカーの世界は、属人的で刹那的でした。Jリーグクラブであっても、監督が代わったらスタッフはじめ戦術も総入れ替えということがあります。それが上手くいかなかったら、また入れ替え。蓄積されるものがないんですよね。

 ヨーロッパのクラブには当たり前のようにあるものが、日本にはない。“チームの型”がしっかりあれば、それに合った監督を連れて来ることができるし、新しいコーチにも学んでもらって指導を均一化できます。指導を受ける側も混乱しませんよね。

 実際のプレーモデルとして一例をご紹介すると、たとえばサッカーにおける局面を我々は4つに分けています。「攻撃と守備、そして守備から攻撃、攻撃から守備」ですね。その局面において、何をするかを“チームの型”の中で規定しているんです。