また、フィールドを3つに分割して、それぞれの決まりごとを設ける。当たり前のようなこともきっちり可視化して、選手の潜在意識の中に刷り込ませるのです。サッカーは90分間の試合のうち、実際にボールに触れるのは2分程度。なので、残りの時間で何を考えるかが重要なんですよね。認知、判断、実行が大事と言われますが、中でも認知・判断が重要だと思っています。

 前回のサッカーワールドカップのとき(2018年)、ベルギー代表に負けてしまいました。最後にカウンター攻撃を受けるのですが、山口蛍選手が相手選手の懐に飛び込んでしまいました。本来なら自陣に帰りながら、味方の戻りを待つことが鉄則です。あの状況でアドレナリンが出てしまったのでしょう。仕方ないことですが、あのプレーから失点してしまいました。山口選手自身も冷静に考えるとわかるはずです。でも、育成年代からのトレーニングによって無意識レベルでこれができないとダメなんです。

子どもが自ら気付くシーンが
減っている日本社会に感じること

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 ただ、日本の社会に目を向けると、この認知と判断をしなくても良い構造になってもいます。タクシーに乗れば自動で扉が開き、コンビニで何でも買える。駅でも音を発して注意喚起をしてくれますし、朝は旗を持った大人が子どもの安全を確かめてくれる。

 整った社会がある反面、子どもが自ら気づくシーンが減っています。ヨーロッパでは、ペットボトルに水を入れて持ち運んで、トイレも事前に済ませるなど、常に準備が必要だったりします。その良し悪しはあるかと思いますが、主体的に何かをする機会は多い方が子どもには良いと思います。

 FC市川GUNNERSは、これからも地域に根ざしたクラブとして活動していきますが、それにより生涯スポーツの場になれると嬉しいですね。少子高齢化が進むこの国で、医療費や健康保険の破綻が危惧されています。その解決法のひとつに、いかに健康寿命を伸ばすかがあります。そこには運動は欠かせません。

 多くの方が、学生時代に携わったスポーツから離れているかと思います。もう一度、それを取り戻してほしいですよね。好きなことにやっていたら時間が過ぎるのも早いですし、新たな仲間ができます。また、こういったクラブが全国各地に誕生することも願っています。