「居住地制限の撤廃」で
得をするのはこんな人

 まず、最初の手掛かりとして、居住地制限の撤廃についてはヤフー以外にもメルカリ、LINE、GMOペパポなどが導入しています。ひとことでまとめると、IT企業に導入事例が多く、背景としては優秀なIT人材を採用する際の魅力として、居住地撤廃がアピールできるという事情があるようです。

 つまり、

(1)会社全体としてリモートワークが成立する働き方インフラが整っている
(2)会社の競争力を維持するためには、優秀な社員が入社・定着することが重要だという競争環境がある
(3)社員が優秀なITエンジニアの場合など、スキル面でも業務面でもリモートワークが当然という認識がある
(4)そのような社員の中で「本社とは遠距離にあたる場所に住みたい」という個人的な事情がある

 という前提条件がそろう場合に、会社にとっても社員にとってもこの制度が大きな意味を持ちそうです。

 その「個人的な事情」については、さまざまなケースが考えられます。アフターファイブや週末は自然に囲まれて過ごしたいから、北海道で勤務したいという人もいるでしょう。配偶者が地方都市に転勤することになったので、同じ場所で同居しながら仕事をしたいという人もいるかもしれません。副業規程に反しない形で、実家など高齢の家族の稼業を一部手伝いながら、リモートで本業の仕事をするという場合も考えられるでしょう。

 今回のヤフーの新人事制度なら、どの事情の場合でも新しい制度を適用して遠距離居住での仕事ができそうです。

 さて、軽井沢や札幌に居住している社員でも今回のルールの場合、会社から出社指示が出たら東京まで出勤しなければいけないという点は変わりありません。

 ここから先は、あくまで「想定」での話となります。業務として週3日はリモートワークで大丈夫でも、週2日は本社に出社して何らかの業務をこなさなければならない仕事をしている人の場合、現実的な居住地は軽井沢のように新幹線通勤ができる場所ということになるのではないでしょうか。

 一方で、基本はリモートワークで仕事がこなせて、月数回だけ本社に来なければならないという業務なら、札幌勤務で飛行機通勤というのが現実的にも可能になりそうです。

 これまでのヤフーでは、飛行機・特急での通勤はNGでかつ、交通費の片道上限は6500円に設定されていました。通勤ルートとして新幹線通勤は認められていたようです。特急NGの意味は、通常の電車の利用であれば乗車券代は会社負担だが、特急料金は自腹という考えになります。つまり、軽井沢からヤフーの本社がある赤坂見附に出社する人は、乗車券分の2808円は会社支給ですが、特急指定席3380円は自腹ということになっていたはずです。

 一方で、これからを考えると、軽井沢-赤坂見附間の1カ月の新幹線通勤定期券代13万4140円は、新ルール上では月額上限の15万円内に収まるため、全額会社負担でカバーしてもらえることになりそうです。