買い手に対する詳しい調査も必要
相手企業の実態を詳細に調査するデューデリジェンス(DD)では、買い手が、売り手企業の基本的な情報だけでなく、オーナー(大株主)の個人的な身辺に至るまで調べることが一般化している。だが、反対に、売り手が買い手企業の調査を徹底的に行うことは少ない。
「中小企業のM&Aは結婚と似ている」という比喩が正しければ、買い手、すなわち嫁入り先(婿入り先)を詳細に調べるのは当然のことである。長年、手塩にかけた商売と大切な従業員や取引先を手放すのだから、「これから何世代にもわたって信頼できる相手なのか」という厳しい視点が必要なはずである。
M&Aにおいては「シナジー」という用語が頻出するが、外資系コンサルティング業界で厳しい修業を積んできた者は、シナジーという用語を安易に使うことはまずない。二つの異なる事業や会社の統合によって、追加的な価値が「どこに」「どのように」創出されるのか判明していないにもかかわらず、そういった言葉を使うことはプロとして適性を疑われるからだ。