いまや対中投資国の実質ナンバー1
尖閣問題で迎えた曲がり角
史上最悪の日中関係と言われる時期にもかかわらず、この秋、華東地区では日系工場の竣工式が相次いでいた。
新工場の敷地には日章旗が揚がり、市長や書記など要人も馳せ参じ、日中の来賓が共に宴席を囲むところもあれば、日にちをずらす、あるいは時間帯をずらすなど、日本人と中国人が一緒にならないような配慮をするところもあった。
2011年に中国に拠点を設けた企業もいくつかある。「さあ、いよいよ」という段で、尖閣問題に揺れ、不幸にも逆風の風下に置かれることになってしまった。まさに予想外の展開だ。
2012年10月の「日本の対中直接投資額」は前年同月比で4.59億ドルと、32.4%も減少した。しかし、1月~10月の総額でみると60.8億ドルであり、この額は前年同期比10.9%の伸びを示している(中国商務部)。つまり、尖閣問題さえなければ、さらに大きな成長が見込まれた可能性が大きい。
さらに、同投資額を1月~10月で比較した場合、10年は34.6億ドル、11年は54.8億ドルと、年々金額が上昇している。国・地域別で見た対中投資トップテンでは、日本は今年、ついに台湾を抜いて香港に次ぐ第2位に躍り出た。
これについて、みずほ総合研究所アジア調査部の鈴木貴元上席主任研究員は「12年の対中投資については、日本は11年からの対中進出ラッシュの勢いが残り、中国市場狙いの投資が続いたことが挙げられる。日本は市場開拓で出遅れていたことが、勢いをつけた理由とも言える」と分析する。
香港はタックスヘイブンによる迂回投資の拠点として使われているケースが多いことを考えると、実質、中国にとって日本は“最大のお客さん”ということになる。尖閣問題は、まさに日中ビジネスが蜜月を迎え、さらに盛り上りを見せようとする矢先に起きた悲劇でもあった。