株式投資で資産を築き、入社4年目の26歳でFIREを果たした『投資をしながら自由に生きる』の著者が、最速で「お金と時間の自由」を得るための方法を伝授する。その方法は、一般的なFIREとは、まったく別の概念だ。FIRE達成者の多くは、いずれ何らかの仕事をするようになる。ひと通り自由を味わうと暇を持て余してしまい、社会とのつながりを得るためにも、結局は仕事をするようになるのだ。ならば、最初から時間と場所に縛られない自由度の高い仕事をしつつ、経済的自由を謳歌する方法を選択するべき。本当の自由を最速で得るたった1つの方法、それは「投資×小さな起業」だ。
STEP 2 ベンチャー企業でビジネスを学ぶ
【前回】からの続き。
大学卒業後は、東京・赤坂にあるITベンチャー「オープンドア」に入社しました。
旅行比較サイト「トラベルコ」を運営する会社で、私が在籍していた頃は未上場企業でしたが、2015年に東証マザーズに上場し、現在は東証一部上場企業になっています。
理系の大学卒ということもあり、同じ大学の友人はみな大学院に進学するか、エンジニアとして有名な大手企業に就職しました。
そんななか無名のベンチャー企業に就職した私は、周囲からすると、かなり異端の道を選んだように思われていたでしょう。
投資は自分の「お金」を投じますが、就職は自分の「時間」を投じます。
お金は一度失っても取り戻すことができますが、時間は一度失ったら二度と取り戻せません。その意味では、時間はお金より貴重なのです。
特に新卒で入社する会社を選ぶというのは、自分の20代の貴重な時間の投資先を選ぶということです。
自分の貴重な「時間」をどの会社に投資するかは、「お金」を投資する以上に慎重な判断が必要となります。
当時、同社は「3年で社長になる人材を求める!」というキャッチフレーズで新卒を募集していましたが、そのコンセプトが私にとっては非常に魅力的でした。
最終面接は、先輩社員や社長を交えた会食のあと、一緒に麻雀をするというスタイルでした。会議室での質疑応答ではなく、お酒が入ったくだけた場での会話や麻雀の打ち方などで、自頭のよさやポテンシャルを観察していたのでしょう。
いま思えば、こうした形式にとらわれない面接方法も、潜在的に自由を求めていた私の感覚にマッチしていたのでしょう。ご縁をいただいて入社することになりました。
就職活動では、いわゆる企業の合同説明会に参加したこともありました。しかし、誰もが知る大企業の説明会は、まったく面白味を感じませんでした。
大企業のブースは大きくて豪華でした。しかし、担当者が説明する会社概要や仕事内容は、検索すればその会社のホームページに掲載されていそうな、あたり障りのない情報ばかりだったのです。
そんな合同説明会に嫌気がさして早々に帰ろうかと思っていたところ、端っこの小さなブースで熱心にしゃべっている人の姿が目に入りました。
「企業の準備スペースかな?」と思ったくらい小さなブースだったのですが、そこで話していたのは、ソフトウェア開発のベンチャー企業「ヘッドウォータース」の篠田庸介社長でした。
いまは東証マザーズ上場企業となっていますが、当時は創業間もない無名のベンチャー企業でした。
その小さなブースで篠田社長は、自分の夢を自分の言葉で語っていました。
資料も何もなく、体一つで生き生きと語る篠田社長の姿を見て、「こんなふうにかっこいい大人もいるんだな」と感心したことをいまでも鮮明に覚えています。
そこから私の就職活動は、ベンチャー企業中心になったのです。
ときには新卒募集をしていないベンチャー企業を自分で探し当てて、ホームページにある問い合わせフォームを通してアポイントメントをとったこともありました。
たとえば、「カメレオンコード」という日本初の非接触型2次元カラーバーコードを開発した「シフト」という会社は、その技術が雑誌で紹介されているのをたまたま見かけて興味を持ち、直接連絡をとりました。
そんな就活生は前代未聞だったのか、なんと社長と副社長が時間をとって会ってくれて、自社のことや自分たちが成し遂げたいことを熱心に話してくれました。
どこの馬の骨かもわからないたった1人の学生のために、わざわざ時間をとってくれた社長と副社長には本当に感謝しかありません。
そんな常識にとらわれない就職活動のスタイルで、数多くのベンチャー企業の経営陣とお会いしました。
そして、結果的にはオープンドアとのご縁をもらい、自分の貴重な20代前半の時間をそこに投資すると決めたのです。
20代前半の貴重な時間を、若いうちからさまざまな仕事を任せてもらえるベンチャー企業に投資したのは、本当に正解だったと思っています。
オープンドアに就職が内定してからは、入社前にもかかわらず社員と同じような業務を任され、次年度の新卒向け採用プログラムを考えたり、就職説明会を開いたりしました。
正式に入社してからも「社長が直属の上司」という環境で、非常に多くのことを学ばせてもらいました。
すぐに新卒採用の責任者を任されたり、スマートフォン向けの新規事業を任されたりと、最初はわからないことだらけでしたが、とても刺激的な毎日でした。
その一方、社会人になってからも、投資はずっと続けていました。
大学時代の投資成績は、知識や経験不足もあって可もなく不可もなくでしたが、社会人になってからは、仕事を通じて会社の仕組みや世の中の経済の流れについて理解が深まったこともあり、投資による資産が一気に拡大しました。
私が社会人になった2010年は、前年に発売されたiPhone3GSによって、それまでのガラケーからスマホにユーザーが移行しはじめた頃でした。
ガラケーからスマホにシフトしたことで、携帯関連のビジネスは大きな環境の変化の最中にありました。
そんななか、スマホ向け広告配信サービスで当時、ファンコミュニケーションズという会社が提供するアドネットワーク「nend」(広告の配信先を多くの媒体から選別して自動で配信するシステム)が、とても高いパフォーマンスを発揮していました。
仕事を通じて「nend」という広告システムを知り、ファンコミュニケーションズに高い将来性を感じて投資をしました。
すると、当時はスマートフォンユーザーがどんどん増えていたこともあり、ファンコミュニケーションズは、約1年で株価が6倍ほどに跳ね上がりました。
また別の業務では、スマホ向け新規事業を企画するために、ゲームアプリのトップセールスランキングを定期的にチェックしていました。
その頃、「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)というゲームが、ずっとランキング1位をキープしていました。
仕事上の調査の一環として、パズドラをダウンロードしてみたのですが、実際に遊んでみると、これが本当によくできたゲームでした。
それまでまったくゲームをしていなかったのですが、そんな私でもスキマ時間で無理なく楽しむことができ、気づいたときにはすっかりパズドラにハマってしまったのです。
そこで、パズドラを提供している会社を調べてみると、ガンホー・オンライン・エンターテイメントという上場企業でした。
そのガンホー株はテレビCMを積極的に打ったこともあり、約1年で株価が約70倍にも急成長しました。
パズドラのあとは、「モンスターストライク」(モンスト)というスマホゲームが流行りました。
提供元はmixi(ミクシィ)という上場企業で、もともとSNS(交流サイト)を提供していたのですが、FacebookやTwitterなどの急拡大に押されて業績が低迷していました。しかしその後、モンストが大ヒットして、約1年で株価は20倍以上に急成長しました。
このように仕事を通じて知った身近な情報をもとに、これは伸びそうだなと思った会社の株を買うことで一気に資産が増えていったのです。
企業活動や経済の流れをよく理解していなかった大学生の頃は、世の中の出来事を株式投資に結びつけて考えられませんでした。
ところが、社会人になってからは仕事を通じて企業の動きやつながりが見渡せるようになり、自分自身が成長産業のIT企業で仕事をしていたことも相まって、投資のパフォーマンスが飛躍的に高まっていったのです。
毎月の給料の一部やボーナスなど、当時は生活に必要な最低限のお金以外は、すべて株式投資にまわしていました。