行動スイッチを入れるには「ぶっとんだ目標」が必要

 数値目標があっても動けないというときに必要なのは、欲望を伴った「ぶっとんだ目標」です。「ぶっとんだ目標」とは、すぐに手が届くようなものではなく、実現可能性や感情のブレーキにとらわれない「心底、実現したい目標」のことです。

 例えば、経営者になりたい、海外に移住したい、趣味を生かして独立したい、田舎に引っ越して農業を始めたい、エベレストに登りたい…。一度制約を外して考えてみてください。目的地を設定すれば、カーナビがゴールまで導いてくれるのと同じように、「ぶっとんだ目標」が明確になれば、私たちはおのずと動き出すことができるのです。

「ぶっとんだ目標」というのは、「旅」に似ています。

 旅なんてしなくても、普通に生きていくことはできます。でも、日々の生活にどこか物足りなさを感じている人、やるべきことがたくさんあって忙殺されているのに充実感がない人、ダラダラしているわけではないのに何もできないまま時間だけが過ぎてしまうと感じている人にこそ、「旅=ぶっとんだ目標」が必要です。

「ぶっとんだ目標」がない人は、旅の目的地を決めずに日々さまよっているようなもの。行きたい未来が決まっていないので、人の指図や社会情勢に左右され、目の前のことに一喜一憂し、うれしいこともつらいこともその場限りとなってしまいがちです。全てが断片的で一時的では、せっかくの行動も努力も苦労も、積み上がっていきません。

 例えば、同じ会社で働く30代の社員、AさんとBさんがいたとしましょう。

 Aさんは、「自分は一生平社員のまま終わる人間だ」と考え、漫然と生きています。とにかく無難に生活できればいい、クビにならなければいいと思いながら、日々仕事をこなしています。そんなAさんは、トラブルが起きたときに「あ〜、なんでこんな大変なことに巻き込まれてしまったんだ…。勘弁してくれよ」と思うでしょう。

 それに対して、Bさんは、「私は将来経営者になる!」という「ぶっとんだ目標」を持っていて、今のうちにさまざまな経験を積んでおきたいと、日々の仕事に取り組んでいます。Bさんは、トラブルが起きたとき、「よし、なんとか乗り切ってやろう。自分が社長になったら、もっと複雑で解決困難な課題に直面することもあるはずだから、これもいい経験だ」と思うでしょう。

 同じ出来事に対しても、「ぶっとんだ目標」があるかないかによって、捉え方がまったく違ってくるのです。そしてこの違いは、一つ一つの思考・選択・決断・行動に大きな影響を与えます。

 たとえ今、思い通りの仕事をしておらず、自分が望むような状況でないとしても、「ぶっとんだ目標」があれば、全ての行動、挑戦、苦労が自分の行きたい未来を実現するために必要なリソースとなります。

 過去の失敗や思い出したくもないような経験も、「誰かの役に立つために必要だった」と思える日が、必ず来ます。何よりも、何げない毎日が楽しく、充実し始めるのです。

「ぶっとんだ目標」を立てる際の最大のコツは、「実現できるかどうか?」よりも、「実現したいかどうか?」を重視すること。「頭の声」ではなく、「体の声」「心の声」にフォーカスを当てることが大切です。

「起業してみたい」と漠然と思いながら実現のために動けないときは、「私には能力がない」とか「人から笑われる」など、「頭の声」だけを聞いている可能性が高いわけです。自分自身に「本当はどうしたい?」という問いかけを続ければ、「趣味のアウトドア関連で起業したい」などと、「心の声」にもとづいた「ぶっとんだ目標」が少しずつ顕在化します。すぐに答えが出なくても、焦らず「本当はどうしたい?」という問いを持ち続けることで「心の声」に気づきやすくなっていくでしょう。

 自分自身の「本当はどうしたい?」がわかると、判断、決断に迷わなくなります。その結果、夢に向かって挑戦し始めることができるのです。