メインとなるのが、アライアンスの規模を生かした共通化戦略だ。

「電池などEVのさまざまな部品で共通の基準を定めたことで、目覚ましい協調の成果を見せられる」と、スナール議長は会見で強調した。26年度までにEVなど電動車の開発に3社合わせて約3兆円を投資し、30年度までに35車種のEVを投入、9割の車種を5つの共通する車台で生産する計画だ。

 また、日仏など世界の主要拠点で電池の工場も拡充し、30年度までに現在の20倍に当たるEV240万台分の電池を生産する。さらに、航続距離が大幅に延びる次世代電池「全固体電池」を日産が開発し3社のEVに搭載するとともに、量産効果によって、EVの価格をガソリン車並みにまで引き下げることを狙う。世界で初めて米グーグル社のデジタルエコシステムを車両に搭載することも発表された。

 元々、この日仏連合3社は、これまでに100万台以上のEVを販売するなど、早くからEVの事業化に乗り出していた実績がある。実際、三菱自は09年に量産型EV「アイ・ミーブ」を、日産は10年に「リーフ」を、ルノーは12年に「ゾエ」を、それぞれ約10年も前から世に送り出している。

 業績回復を受けて、これまで停滞していたEV事業のまき直しを図るとともに、3社の共同事業をより深めることで、量産コストの削減や投資の効率化を実現し、競争力を発揮していくのが狙いだ。3社それぞれの思惑や立場がありつつも、改めてアライアンスとしてEV覇権を目指し、反撃の狼煙を上げた格好だ。

 実は、今回のアライアンスのロードマップの発表に先立ち、日産は昨年11月に別途、30年に向けての長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表している。この長期ビジョンは、30年までにEVを中心とした電動化戦略を意欲的に進めていき、日産が世界の電動車リーダーになるという野望を“再び”実現させようというものだ。