再び、というのはかつてゴーン政権時代の10年12月に、日産初の量産EVとして「リーフ」を市場投入した当時のゴーン社長が「ルノーと合わせてEV150万台を販売する」とぶち上げていたからだ。さらに、16年に三菱自を傘下に収め3社の統括会長となったゴーン氏は、22年までの企業連合中期6カ年計画を17年に発表、グローバルの販売台数1400万台以上という世界トップを狙うとともに、「EVのアライアンスリーダーとなる」と宣言した。しかし、周知の通り、ゴーン最後の野望といわれた世界覇権のもくろみは、ゴーン会長の突然の逮捕により終止符を打った。

 内田新体制による新たな「Nissan Ambition 2030」の内容は、今後26年までに約2兆円を投資し、電動化を加速するというのが骨子だ。

 30年度までに電気自動車15車種を含む23車種の「ワクワクする」新型電動車を投入し、グローバルの電動車を50%以上に拡大する。また、次世代車載電池の切り札といわれる全固体電池の実用化にめどをつけ、24年度に横浜工場でパイロット生産ラインを立ち上げ、28年度には全固体電池搭載EVを市場投入する――というのが要旨である。

 見比べれば分かる通り、今回の3社アライアンスの30年に向けた電動化戦略とロードマップは、この日産長期ビジョンと連動している。

 今後5年間での電動化投資は日産単独で2兆円だったものから、3社連合で3兆円に増加された。また、EVプラットフォームの共通化だけでなく、全固体電池を実用化しその成果をアライアンス全体で享受することも今回の発表で示された。ちなみに、アライアンスでは主要技術や車両などの開発において要素ごとに「リーダーとフォロワー」を決め、リーダーが開発の主軸を担うという戦略を採っている。その共有のためのアライアンス・オペレーティング・ボード(アライアンス戦略会議)を月に2回開催しているという。

3社の複雑な資本関係の行方は
EV覇権の獲得にハードル

 だが、アライアンスがEV覇権をすんなりとつかめるかというと、事は簡単ではない。