この日仏3社連合が業績立て直しに躍起になっていた間に、世界の電動化競争はどんどん先行している。先駆者としての影は薄くなり、いまや世界のEV市場は米テスラがトップ(EVシェア21%)。3社連合の21年のEVシェアはわずか3%にとどまっている。

 世界の大手自動車各社もEV投資を積極的に進める。独フォルクスワーゲン(VW)は30年までに欧州に6カ所の電池工場を設けるとしているほか、トヨタ自動車も30年までに電池の増産に2兆円を投じ「BEV(純EV)も本気」(豊田章男社長)の姿勢を見せて動いている。

 まき返しの鍵となるのは効率的なEV投資といわれるが、病み上がりの日仏3社連合に、そもそも投資余力がどれだけあるかという問題もある。

 3社アライアンスは、昨年の世界販売ランキングでトヨタグループ、独VWグループに次いで第3位の768万台となり前年増減ゼロとなった。ゴーン時代には3社を合わせることで世界覇権が狙えると豪語していたが、足元では仏プジョーグループと伊フィアット・米クライスラーが合併した欧州ステランティスがそれに次ぐ規模に迫ってきているなど、競争相手は新興メーカーだけではない。

 また、3社の複雑な資本関係も依然、経営問題の火種として残っている。現在は、ルノーが日産に43%出資し、日産はルノーに15%出資するという株式構成になっており、ルノーの業績には日産の業績が反映される。一方、ルノーの筆頭株主は仏政府であり、背後に政治的な思惑が見え隠れする。

 さらに、日産は三菱自に現在34%出資し傘下に収めているが、今後注目されるのが、三菱自の株式20%を保有する三菱商事を中心に、三菱グループがどういう動きを見せてくるかだ。

 今回の3社アライアンス合同会見では、冒頭にスナール議長が「株式の持ち合いについての質問が出ているが、今回はアライアンスの強みをショーケースに未来ビジョンを語る場で、株の持ち合いは議題ではない」と断ったが、そうした言及をすること自体、資本関係への関心の高さを表している。

 ただ、今回の発表で、3社アライアンスとしての具体的な電動化ロードマップが発表され、逆説的に日仏3社が当面アライアンスなくしては将来の展望を描くことができないということが明らかになった側面もある。

 このロードマップが軌道に乗れば、少なくとも世界で「3番目」のグループの座は確実なものにできるだろう。3社による株式の持ち合いを再考するのは次のステップ、ということになりそうだ。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)