強気相場は懐疑の中で育つ
増益が株価を押し上げる

 景気が弱々しく回復し始めた頃には、既に株価が上がっているケースも少なくない。そんなときには、景気に比べて株価が高すぎないか、といった懸念をよそに、株価が上昇し続けることも十分に起こり得る。

 金融が引き続き緩和されていて、当分の間は緩和が続くことが見込まれる場合には、投資家たちは金融引き締めリスクを気にせずに、投資できる環境が整っていることになる。

 そんな景気回復のときには、前期の利益水準が低いがゆえに、各企業の増益率が非常に大きくなる可能性がある。景気が弱々しく、市場が景気の先行きや企業の増益に関して懐疑的なときの大幅増益は、サプライズとして株価を押し上げる。

強気相場は楽観の中で成熟する
買い注文で株価はさらに上昇

 景気が力強さを増して、人々が景気の先行きに楽観的になれば、株価に対しても強気になる。人々が強気になって買い注文を出せば、株価は上昇し、それが一層人々を強気にさせるというサイクルが生まれることも少なくない。

「買いたいので、少し下がったら買おう」と考えている投資初心者たちが、株価が上昇を続けるのを見て、「急いで買わないと株価が一層上がって買えなくなってしまう」と考えて買い注文を出すのも、このタイミングだろう。

強気相場は陶酔の中で消えていく
投資初心者は要注意

 景気が絶好調となり、人々の間に陶酔感が漂うようになったとき、企業収益の先行きが明るいとは限らない。景気過熱によって原材料コストや人件費が高騰する一方で、生産能力いっぱいに生産しているので売り上げは増やせない、といった企業が増えてくるからだ。

 少なくとも、増益率は格段に低下するだろう。前期の利益額が既に巨額だったため、景気回復初期のようなサプライズは期待しにくい。

 一方で、この局面では金融政策が引き締めに転じる可能性がある。市場が金融引き締めを懸念し始めるだけでも、株価にはマイナスのインパクトが生じる。こうして、投資初心者が陶酔感に酔いしれているときに強気相場は終わるのである。

 問題は、それに気づかず、「ようやく株価が下がってきたから、頑張って買おう」と考える投資初心者が多いことだ。景気の現状と比べて、株価が割安に見えたとしても不思議はない。

 そうした初心者は、買ってからさらに株価が下がると、「今売ると損が確定してしまうから、株価が戻るまで待とう」と考えて買った株を塩漬けにしがちだ。しかし、既に強気相場は終わっているので株価が戻ることはなく、一層の下落を続けてしまう。

 以上が、景気循環と株式相場のイメージである。もちろん、この通りになるとは限らないが、投資をするに際しては、こうしたことが起き得るということはしっかり認識しておこう。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織などとは関係がない。また、当然であるが、投資は自己責任でお願いしたい。