社内キャズムを超えた先にあったもの

KDDI サービス企画開発本部 企画開発戦略部 技術戦略グループ エキスパート 大橋衛氏

 ところで、大橋にとって2020年のCCoE設立は2度目の挑戦だ。2013年から大橋を中心に一定の成果を上げてきたクラウド推進チームは、2017年度に入った頃にはプロパーやパートナーを含む10名規模のチームにまで成長していた。しかし、2017年度中頃に大幅な縮小が決定し、ほとんどのメンバーが散り散りとなってしまった。事実上の「解体」だった。

 このころにはガイドラインの策定はもちろん、前述の監査証跡ログ保全機能も整備。社内はクラウド普及フェーズに移り始めていた。大橋自身、4年かけてやっと「キャズムを超えられた」と思えるようになっていた。だが、大橋にとってクラウドは、「導入して終わり」の腰掛けのようなプロジェクトではなかった。プラットフォームが変われば働き方も変わる。大橋は、クラウドの浸透をきっかけに、保守的なKDDIのカルチャーを変えたいと思っていた。仕事はまだ山ほどあると思っていたのだが、会社にその必要性を正しく認識してもらうことができなかった。

 それでも何かしたいと居ても立っても居られなかった大橋は、しばらくは残ったメンバーのサポート役として片足を突っ込み続けた。だが、状況は良くならなかった。活動は、徐々にシュリンクしていった。