米国のビジネスパーソンは、
始業前に出社して余分に働いている

トヨタの事業体としての強さの源泉とは?稲田将人(いなだ・まさと)
株式会社RE-Engineering Partners代表/経営コンサルタント
早稲田大学大学院理工学研究科修了。神戸大学非常勤講師。豊田自動織機製作所より企業派遣で米国コロンビア大学大学院コンピューターサイエンス科にて修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。マッキンゼー退職後は、大手企業の代表取締役、役員、事業・営業責任者として売上V字回復、収益性強化などの企業改革を行う。2008年RE-Engineering Partners設立。著書に『戦略参謀』『経営参謀』『戦略参謀の仕事』『経営トップの仕事』(以上、ダイヤモンド社)、『PDCA プロフェッショナル』(東洋経済新報社)、『PDCAマネジメント』(日経文庫)がある。

編集部 磯谷さんは、大野耐一さんからすごく怒られたとか、そういうエピソードみたいなものはあるのですか?

磯谷 いや、あまり怒られたとかいうのは記憶にない。やり直しというのはよくあったけど。怒られたのかもしれないが、鈍感だったのかもしれないね。

稲田 鈍感さと言う表現よりも、強さと言う表現が適切なのでしょう。本質に意識が向いているから、些末なことは気になっていないと。

磯谷 まあ、僕らのころは戦後の焼け野原で、とにかく日本を経済大国にしようと、みんながそういう強い想いを持ってやっていたから。僕自身もそう思ってやってきた。たとえば、土日に暇だから会社に行くと、必ず誰かがいた。当時は、そういうのが当たり前だった。だけど、いまは時代が変わって、残業をやっちゃいけないとか、休日出勤はいけないとか、有休休暇は全部とれとかね。だけど、やる気のある人には、もっとやってもらえばいいと思うんだが。

稲田 最近の風潮は、そうなってしまいましたね。外資系企業で勤めていた時に米国本社で仕事をして気が付いたのですが、確かに定時の午後6時には、皆、家に帰ってしまい人はいなくなります。日本と同じペースで仕事をしていたら、午後7時に門が閉められ、会社から出られなくなったことがありました。

 ところが、出張中の時差のせいで朝早く目が覚めたので早めにオフィスに行くと、朝の7時にはすでに結構、人がいて、普通に打ち合わせなどが行われていました。結局、定時外に働く時間帯が朝と夜で違うだけで、皆、ほんとうによく仕事をしていました。こういう米国企業の実態を、日本では監督官庁などが知っているのだろうかと思います。残業時間に意識を向けるのではなく、マネジメントの仕方を考えねばならない問題なのですが。