人間尊重の企業文化を醸成し、
地道な指導で強い事業体をつくり上げる

磯谷 当時はみな、良く仕事をしてくれていたが、私自身には反省もあって、そこまで仕事にコミットできない人に対しては、配慮が足りなかったかもしれない。知らず知らずのうちに、そういう人を切り捨てたんじゃないかなと。社員のみんなを本当に幸せにできたのかという想いはあるね。

稲田 私が在籍していた頃は、前向きな方は全員、自らファイティングポーズを保ってやっていた印象はありますよ。

磯谷 日本を産業大国にしなければいかんと、みんなそう思ってやっていたからね。でも、さっき言ったようにやっぱり気を遣わなければいけないなと。当社の経営者たちには、そういう心配りがあったからね。従業員が幸せになるためには、何とかして成果をあげさせて、成功させ自慢話をさせて、やりがいを持たせることが大事だなと思う。

稲田 あの頃は、いつも皆が、まだまだだ、まだダメなんだと言って、いつも課題に取り組んでいました。議論をしていてもすぐに、まだできていない課題の話に移っていきました。

磯谷 あなたがいた頃は、確かにまだまだだったと思う。皆、よく頑張ってくれていたよ。自分たちに能力が足りなければ、時間で稼ぐより仕方がないと課題に取り組んでいた。それで収益体質の工場が出来上がっていったと思う。

稲田 あの文化の下であれば、社員たちの努力が結実するのは、よくわかります。何かあると、ここがいかん、あそこがいかん、こうせないかんと常に話がなされました。一生懸命やっていましたもん。

磯谷 結局、私の前の社長の豊田芳年さんが指導を依頼した大野耐一さんに、体質改善をしてもらったことが大きかったね。

稲田 今回のお話をまとめさせていただくと、まず人間尊重の価値観のもと、企業の文化を創ることの大切さの具体的な指導を受け、そして地道に根付かせていったことが強い事業体をつくりあげた、となるでしょうか。

 また、大野耐一さんによる指導のリアルなお話を伺うことができて、私自身もいろいろと気づきがありました。大野耐一さんがやってきたことを、こうして多くの方に読んでいただけるようにできたのは、今回が初めてではないでしょうか。貴重なお話を本当にありがとうございました。

おわり