スポーツに不可欠なのはDX化か、ベテラン力か?岡田武史氏の采配に見る「最適解」スポーツに必要なのは「DX化」か、それとも「ベテランの勘」か(写真はイメージです) Photo:PIXTA

DX(デジタルトランスフォーメーション)導入が進み、ビッグデータやAIによるデジタルソリューションがビジネス成功の鍵となってきた。システムのデジタル化や膨大なデータの分析は、仕事の効率化・生産性アップを助けてくれる。スポーツの分野でもDXの力は大きい。書籍『岡田監督 信念のリーダーシップ―勝てる組織をどうつくるか』(ダイヤモンド社)を紐解きながら、スポーツの世界におけるDXによるデータ活用の成功例と共に、データでは測り切れない可能性についても考察していこう。(文/鈴木 舞)

東京五輪で日本柔道が躍進
スポーツ分野で勝利を支えるDX

 2021年に開催された東京五輪でも、DXの力は発揮された。井上康生監督(現在は退任)率いる日本柔道男子チームは、徹底的なデータ分析を駆使して選手を強化。五輪史上最多となる5個の金メダルを獲得した。

 東京オリンピックの日本柔道チームで活用されたのが、試合映像分析システム「D2I-JUDO」だ。クラウド型映像分析により、選手の試合成績、組手や技の傾向がデータとして蓄積され、リアルタイムでの詳細な分析が可能になった。さらには、審判が出す指導の傾向もデータで確認できる。データ化された情報は戦術やトレーニングプランの計画に役立ち、活用次第で勝利を導き出せるのだ。

 データ分析やデータ戦略は、東京オリンピック以前からスポーツで活用されてきた。さまざまなスポーツを観戦していると、監督やコーチがノートPCを片手に指導している姿をよく見かける。ひと足遅れて日本柔道でも、リアルタイムのデータ分析が浸透してきたのだ。

 D2I-JUDOの積極的な活用については、全日本柔道連盟科学研究部の石井孝法氏の功績も大きいだろう。ロンドンオリンピックでは、男子柔道が金メダル0個という結果に終わった。井上氏や石井氏らは、データの蓄積と活用の必要性を強く感じたという。ロンドンオリンピックから約9年。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受ける中、データ分析の活用は見事に当たり、東京オリンピックで男子柔道は大きな活躍を見せた。