女子の検査を担当した検査官は、従来通りに検査をして妥当な判断だったと主張した。ところが、高梨選手やドイツの選手など検査を受けた選手たちや出場各国関係者から、次々と異論が噴出した。

 検査官と選手の証言が完全に食い違い、次々と新しい情報が出てくる。真偽は不明で、事態は混迷を極める一方だ。

 そして、女子フィギュアスケートのカミラ・ワリエワ選手のドーピングを巡る問題だ。ワリエワ選手は、昨年12月の試合で提出した検体が陽性となり、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)が五輪への暫定資格停止処分を下した。ところが、ワリエワ選手側の抗議により処分が解除されていた。

 これを不服とした国際オリンピック委員会(IOC)や国際スケート連盟(ISU)などがスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴したが、CASはワリエラ選手の出場を許可した。CASは、その理由として、現在15歳のワリエワは世界ドーピング防止規定(WADC)における「被保護者」であることや、五輪期間中の検体は陽性ではなかったことなどを挙げた。

 ドーピング疑惑のある選手が、世界最高のスポーツの祭典である五輪に、IOCやISUが不服とする中で出場するという異様な状況となった。これに対して、バンクーバー五輪金メダリストのキム・ヨナ氏など、世界中から反発の声が上がった。

 これらの「大騒動」については、中国や、ロシアなど中国を支持するとされる国を勝たせる一方で、「外交ボイコット」を行った国など、中国と対立的な国をおとしめているとネット上などで指摘されたりした。

 だが、実際はショートトラックスケートで疑惑の判定で失格となった韓国やロシアは、「外交ボイコット」を行っていない。

 逆に、ジャンプ複合団体で銅メダルを獲得したカナダは、「外交ボイコット」を行っただけでなく、中国通信機器大手・ファーウェイの孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)の拘束以降、中国との関係が悪化してきた。要するに、中国との関係性で恣意的に判定が行われてきたという説は論理的な根拠が薄い。