ゲーム界隈特有の
二つの“密室性”とは

 先日、過激な発言で知られる某プロゲーマーがある配信中にその言動を問題視され、契約事務所を解雇となった。毒舌が人気の一因でもあったが、今回はそれがあだとなった形である。

 実はゲーマー界隈というのは発言が過激だ。世間一般では差別用語に当たるような品のよろしくない言葉がスラング化して日常的に用いられる。これには二つの“密室性”が強く関係していると見ている。

 ゲームは、ほとんどの場合密室でプレーされる。ネット回線の向こうに他のユーザーがいたとしてもそのことはあまり肉感的に想像できないので、1人密室でプレーしている気分である。そして、車の運転でイライラしたことのある人ならわかると思うが、密室というのはエゴが肥大化しやすく、簡単に他者に攻撃的な心持ちになる。普段は考えつきもしないような悪態が、ごくなめらかに口からついて出る。これが密室効果のすごさであり、ゲーマー界隈にある“密室性”その1である。

 その2は、ゲームの配信やゲーム投稿にある“密室性”である。配信者の放送は一般に「枠」や「部屋」と呼ばれるが、感覚的には「部屋」が実態をよく表しているように思う。

 配信者はその部屋の中で神に等しい存在である。特にひとたび人気を得れば、面白くない冗談や性格的にゆがんだ部分など全てをリスナーが肯定してくれる。見かねて配信者に対して正論を述べたリスナーがいたとしたら即刻アンチと見なされ、配信者の周りを囲う通称“囲い”に袋だたきにされて追い出される。

 配信者はその密室で、ぬくぬく、ぶくぶくと自我を育てるのである。よほど人間的に練れていない限り勘違いが助長されていくほかない。下品な発言がウケた配信者は「自分には下品な発言が求められている」と考え、リスナーはその方向性を無分別に支持し、その部屋の世界だけでどぎつい価値観が着々と形成されていく。これが“密室性”その2である。

 こうした密室によって仕上がった配信者は、品のよろしくない配信や動画投稿を続けていく。それを見た小学生、中学生、20歳前後くらいまでのゲーマーが「自分もやっていいんだ」と得心し、まねするのである。

 こうして“密室性”2つの相乗効果によって、ゲーム界隈は民度がよろしくない空気が立ち込めているのであった。

 ただ、これに対しては少し是正される流れが出てきている。6、7年ほど前であろうか、俗にいう味方批判(ゲーム内で味方になったプレーヤーを一方的にけなすこと)などのマナーよろしくなき行為は、とがめられる気配すらなかったのに、3、4年くらい前から「そういうのってよくないよね」と堂々表明する配信者が増え始めた。