コロナ禍でも「隙を見せるな」
厳し過ぎると思えるほどの叱咤
そんな中でも緩みは出てくる。「コロナだから……」という言い訳が部員の若い心に忍びこんでしまうのかもしれない。監督も大目に見るところは見た。
それでも、声を荒らげてしまうこともあった。
7月のことだ。Bチームの守備練習。ノッカーの佐藤孝治助監督に対して「お願いします!」と声を上げる4年生の三塁手。そのとき、両手を膝に付けていた。
小宮山は思わず叱りつけた。
「大先輩に対して、この態度はあり得ない。言葉だけでなく、気持ちが入っていれば最敬礼する。ずっとこんな調子でやってきたんだと情けなくなって」
4年生たちには期待も大きかっただけに、監督の口調は痛烈だった。
一般には厳し過ぎると思える叱咤である。叱られた4年生も戸惑ったかもしれない。だが小宮山が石井連藏から授かった最も印象深い教えが「隙を見せるな」なのだ。
「一所懸命やっている、なんて言ったら終わり。いつも一所懸命にやってないから、そんな言葉が出る。早稲田の野球部員たるもの、いつでも隙を見せてはいけない」
膝に付いてしまった両手こそが隙なのだった。
猛暑の春季リーグ戦が開幕
延長戦で2敗して同率の3位
真夏の春季リーグ戦が始まった。
ベンチ入り選手はバスで移動。駐車場からベンチへの動線まで決められる物々しさだ。