ホンダとソニー。言うまでもなく、かつて「世界の…」が付き“チャレンジャーブランド”の名を欲しいままにした名門企業だ。戦後間もない時期の町工場から世界企業に育てた、ベンチャー企業のはしりである。くしくもホンダ創業者の本田宗一郎氏とソニー創業者の井深大氏は、共に尊敬し合い長年の交遊があった。

 そのホンダとソニーグループがBEV(ベブ、バッテリー電気自動車)事業における戦略提携で合意し、年内に共同出資会社を設け、両社で開発したBEVを25年に発売することになった。

 なぜ、ホンダとソニーが今回、BEV事業で手を組むことになったのか。

 まず、直接的なきっかけはソニーが、今年22年1月の米テクノロジー見本市(CES)で電気自動車事業に参入検討を表明したことだ。ソニーは2年前のCES2020で発表したコンセプトカー「VISION-S」に続き、今年はSUV型の「VISION-S 02」を披露している。吉田会長兼社長は「車の価値を『移動』から『エンタメ』に変える」とモビリティ産業を変革するビジョンを語っていた。

 ただ、そもそも、ソニーの自動車事業への関わりは20年以上の歴史がある。過去、01年の東京モーターショーではトヨタと共同開発したコンセプトカー「pod」を披露している。センサーが読み取ったドライバーの心理に合わせてヘッドライトが点灯するような「未来の車」の試作車だ。その後もソニーは先行してEVの開発を続けていたのだ。

 ソニーはリーマンショック以降、09年3月期からの6年間で累計1兆円の最終赤字を積み上げたが、それを契機に大胆な事業構造改革に取り組んだ。現在は、エレキ・半導体・ゲーム・音楽・映画・金融の6事業に集約し既存事業の磨き直しを図り、22年3月期には連結営業利益が1兆円を超える見通しだ。そして、次の本命事業として照準を合わせたのが「EVを核とするモビリティ事業」だったのだ。